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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第10章 病原のフォーレ
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597 勇者の決意

 アクアとの手合わせを終えてから旅を再開し、暗くなってきたところで野宿をする。

 最近の夜番(よばん)はロンギングの精鋭達だけで回すようなっている。人数こそ一桁まで少なくなってしまったが、逞しく成長した事もあって任せている。

 それにタカハシ家のテリトリー外にいる魔物はあまり強くない。任せる方が為になるだろう。

 ボクは馬車の中で横になり、身体を休めていた。

「よぉジャス。まだ寝てねぇよな」

「ワイズか。クミンも一緒かい」

「まあね。随分小娘達と打ち解けてきたじゃないかい」

 二人が腰を下ろしながら話をするので、ボクも身体を起こした。

「ヴァリーとの戦いでいろいろと気付かされてね。ボクは仲間についてかなりねじ曲がった考え方になっていたと思い知らされたよ」

「ようやく戻ってきたようじゃないかい。仲間は護るものじゃなくて、頼るものだからね」

「はっ、随分と下に見てくれてたじゃねぇか。まっ、許してやるよ。おかえり」

 澄んだ気持ちで微笑む。クミンに(さと)され、ワイズはぶっきらぼうに鼻で笑ったよ。見捨てられても仕方がないほどの所業(しょぎょう)をしたのに、二人は待っていてくれた。

「ただいま。まだ迷ってる事はたくさんあるけどね。今回はマリーと、政策について考えさせられた」

 視線を落とす。魔物に害されない平和な日常を夢見ていた。誰もが幸せに暮らし、笑顔の絶えない世界を。けどボクが作ったと思った平和は、人の悪意の温床(おんしょう)をも生み出していた。今は、平和が怖い。

「一人で七めんどくさい事考えて塞ぎ込んでんじゃねぇよ」

「あ()っ」

 ワイズにスパンと頭を叩かれる。

「というかワシらがいない間に何があったんだい」

「ヴァリーは、マリーを蘇らせていた」

 ワイズとクミンが言葉に詰まる。

「知っての通りヴァリーは死者の憎しみをコントロールしていたけれど、マリーに至っては殆どいじってなかったそうだ」

 そう皮切りにして、アクアとエリスを斬った事と、マリーから叩きつけられて憎悪、そしてアクアから聞いたマリーの真相について話す。

 二人とも苦虫を噛みつぶしたような表情で聞いていた。

「クロだったぁ思ってたけどよぉ、想像以上のドス黒さだったんだな」

「平和な一時(ひととき)をいいようにコントロールされていた頃は欠片(かけら)も気づかなかったんだから、ワシらの頭もお花畑だったもんだ」

「まだまだ先の事なのはわかっているけれども、ボクには戦いが終わってから民を導き平和を作れる気がしないんだ」

 現に、マリーの傀儡(くぐつ)となって貧富(ひんぷ)の差を広げてしまっていた。もちろんマリー一人の責任じゃない。ボクが(おろ)かだった。

「まっ、おつむの足りねぇオレらじゃ、戦ってる方がよっぽど楽だかんな。それに越えなきゃならねえ壁がまだわかってるだけで二つもあんだ。まずは全力で壊そうぜ」

「そうさ、面倒ごとなんざ後回しにしちまいな。幸か不幸か、タカハシ家のおかげで悪しき枠組みが壊されてんだ、作り直しやすいかもだろ」

 クミンの言葉は(まと)を得ているのかもしれない。タカハシ家はイッコクのために人々を襲っていたとしたら。やめよう。いくら正解だったとしてもやり過ぎだ。勇者(ボク)らが考えちゃいけない。

「どの道、今は戦うしかないか。ワイズ、クミン。僕たちの手で、アクアを助けよう」

 決意を表明すると、笑顔が返ってきた。

「当たり前だよ。いい加減失われる命と深い悲しみにうんざりしていたところだからね」

「もう誰も死なせねぇよ。アクアも、フォーレもグラスも魔王ごっこをしてるおっさんも、全員助けっぞ」

 心強くて安心させてもらえたよ。

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