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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第10章 病原のフォーレ
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592 か弱い二の腕

「約束していた武器だが、本当にコレで戦うのか?」

 魔王城タカハシにある鍛冶場でぇ、グラスがテーブルに置いてある(くさり)付きの鉄球を示してくれたよぉ。

「わぁ。ありがとぉ。グラスも五本の指が入るくらい好きだよぉ」

「無造作に抱きつくなバカ。それと五本の指に、だ。てにをはを間違えるな」

 感謝の気持ちも込めて抱きついてあげたんだけどぉ、アイアンクローをされながら引き剥がされたよぉ。両足が浮いちゃってるぅ。

「痛ぁい。グラスの握力だとシャレにならないからぁ」

「知るかバカ」

 悪態(あくたい)をつきながら解放してくれたぁグラス優しぃ。アタイは両手で頭を抱えながら鉄球に向き直ったぁ。

 黒光りする球体はアタイの顔が反射して見えるくらいピカピカぁ。両肩からクロスして下げる鎖も付属しててパーフェクトぉ。

「鉄球だぁ。鉄球だぁ。重ぉい。コレでアクアを仰天させる事が出来るぅ。わぁ。痛ぁい」

「浮かれながら鉄球で頭をガンガン打ち付けるじゃない。そんな事しても必殺技のゲージは溜まらないからな」

「むふぅん」

 白衣の端で鉄球を磨きながらぁ、グラスの溜め息を聞き流すぅ。アタイの喜びようにグラスも満足してるみたいだねぇ。

「なんか見当違いな事考えてないか」

「それよりグラス。お弁当はどうやって入れるのぉ?」

「入るわけないだろ。そんなトコまでチャン・○ーハンを求めるな」

 瞳を輝かせながら聞いたんだけどぉ、グラスは平坦な声色で期待外れな回答したよぉ。

「溜め息ものだねぇ。残念だぁ。でぇ、そっちにある双剣がグラスの武器かなぁ」

 ちょっと前に来たときにはなかったぁ、一対の双剣を見つけて近付くよぉ。手に取って鞘から引き抜くとぉ、見事なまでに無骨なロングソードをしていたぁ。

「ゲーム序盤で買う武器みたいにシンプルだねぇ。けどぉ、本物だぁ」

「不要な派手さなんて()らないだろ。ヴァリーみたいに武器を装飾する意味もない」

 グラスらしいねぇ。シンプルにぃ、まっすぐにぃ、ただ強ぉい。思わず頬が緩んじゃったよぉ。グラスも早く戦いたいんだろうなぁ。

「ごめんねぇ。順番とっちゃってぇ。できたら大トリは避けたかったのぉ」

「やっぱり勇者達に何か干渉をしてたか。いいよ。後の事は俺に任せて、暴れてこい」

「暴れるなんて野蛮(やばん)だねぇ。アタイはぁ、舞い散れれば充分だからだ」

 右手を上げてぇ、白くプニっとした腕をみるぅ。程よく肉付いているぅ、か弱い二の腕ぇ。力尽くも嫌いじゃないんだけどぉ、他のみんなに比べたらひ弱なんだよねぇ。

「フォーレは不意を打ってかき乱すのが得意だからな。が武器がとことん似合ってないぞ。ホントに鉄球で大丈夫なのか?」

「大丈夫だぁ。問題なぁい」

「最高の鉄球(そうび)を用意したくなったぞ。いや渾身(こんしん)のデキのつもりだけれども」

 ネタだからぁ、そんな不安そうな表情しないでよぉ。

「作ってもらってアレだけどぉ、武器として使うつもりないからぁ。不慣れな武器より怖い物もないでしょぉ」

 ニマニマと笑みを浮かべて言い切るとぉ、グラスは()っごい微妙な表情をしたぁ。

「俺さ、なんのために鉄球作ったんだ」

「まぁまぁ。使い倒すつもりではあるからぁ、ムダにはしないよぉ。それにぃ、ヴァリーみたいに妹としてワガママ言ってみたかったんだぁ」

 背中で手を繋いでぇ、グラスに下から覗き込むよぉ。すると再びアイアンクローされたぁ。

「あ()だぁ」

「俺はフォーレが年下の姉にしか思えないけどな。いつも手のひらで転がしてくれる」

「コレで最後だから許してぇ。グラスにならぁ、おとーとチェル様とぉ、アクアの事を任せられるからぁ」

 言い切るとぉ、頭を締め付ける痛みが緩和(かんわ)されたよぉ。

「一つ聞くが、フォーレはオレ達タカハシ家と勇者達との戦いの、結果を見据えれてるのか」

「まぁねぇ。たぶん最善だよぉ。もぉ修正できないけれどもぉ、きっと上手くいくぅ。だから頼りにしてるよぉ、おにぃちゃぁん」

「思えばフォーレには振り回されてばっかだったな。仕方ない、頼られてやる」

 ふて腐れるグラスだったけどぉ、満足いく回答をくれたねぇ。

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