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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第10章 病原のフォーレ
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591 種蒔き

 アクアから次のターゲットがアタイになったって聞いて数日ぅ。

 二階建て一軒家の実家のぉ、おとーの部屋でアタイは特製のお薬を飲んでもらってたよぉ。

「なんか思ったよりマズくねぇな。いやマジぃのは間違いねぇんだけど」

「思ったより精神落ち着いてたからねぇ。普段より薬を弱めに作れたよぉ。ススキ様々だねぇ」

「わかっちゃいるけど、フォーレにはホント筒抜けだよな」

 ニッコニコの笑顔で茶化すとぉ、気まずい表情を返してくれたよぉ。感情が出るのはいい事だねぇ。

「おかげでアタイもぉ、安心して勇者達と戦う事が出来るぅ。やっと咲かせる事が出来るぅ。アタイの月下美人(げっかびじん)をぉ」

 しみじみと呟くとぉ、おとーの目が真剣に(とが)ったぁ。

「どうしても使うのか」

「使わなきゃ損だもぉん。叶うならおとーにもぉ、咲いてる姿を見せたかったんだけどねぇ。機会があったらぁ、後からアクアに聞いてねぇ」

 アタイの切り札でぇ、最後の生き様だもぉん。()いのない戦いにしなくっちゃぁ。

「そっか。頑張れよ」

 視線を逸らして俯きながら応援してくれるぅ。親不孝な事をしてるのにぃ、止めないでくれるから申し訳ないねぇ。

「のんびり戦ぁう。それにおとーの背中を押したのはアタイだからねぇ。死地へ追いやっておいて自分は悠々となんて詐欺(さぎ)でしょぉ」

「関係ねーよ。失って初めてわかったんだ。何が何でもとにかく生きて欲しいって。願っちまったんだ、お前らの未来を」

 アタイ本当に悪い子だなぁ。茨の道を進ませてぇ、死ぬほど傷ついてぇ、それでも這い上がって進もうとしてるおとーを眩しく思うだなんてぇ。

 けど怠惰(たいだ)な土に眠ったぁ、命懸けで誰かを守ってみたいって種子(ほんしん)に気付いちゃったからねぇ。どう成長するか育てたくなっちゃったんだぁ。

 最後まで見守れないのが残念だけどねぇ。

「未来よりも今だよぉ。花の命は短いんだもぉん。将来を見据えてなんて言葉があるけどぉ、将来のために今を見殺しにし続けてたら本末転倒だよぉ。十年後もそのまた十年後を思ってぇ、十年後の今を殺し続けるって繰り返しだからねぇ」

「ブラック時代を思い出させてくれるじゃねぇか」

「望む未来なんてぇ、次の休日ぐらいの近さで丁度いいんだよぉ」

 人生を咲かせるチャンスなんてぇ、本当に短いからぁ。

 アタイはぁ、幾分か痩せ細ってるけどまだ気力が残ってるおとーに正面から抱きついたよぉ。どうせだから豊満に実っちゃった物を二つ押し付けちゃぁう。

「ちょっ、フォーレのソレは他の娘よりシャレにならんからな」

「まぁまぁ、スケベ心は大事だよぉ。()えちゃったら種蒔(たねま)き出来ないもぉん。ススキとチェル様の子供ぉ、アタイ達の弟妹(ていまい)を作っとかないと許さないからねぇ」

 しどろもどろになりながらぁ、顔を真っ赤にさせちゃってるぅ。原因はどこにあるのかなぁ。

「変な事言って茶化すんじゃねぇっての」

「本気だよぉ。このままだとアクアが寂しい事になるからぁ、血の繋がった家族を増やしておいてねぇ。おとーにしか出来ないからねぇ」

 微笑むとぉ、驚いた顔して見つめてくれたよぉ。半分本音なんだからぁ。もう半分は建前(たてまえ)だけどねぇ。チェル様とススキに(すが)ってる間はぁ、おとーは生き繋いでくれるからぁ。

「もう三十後半に突入したおっさんなんだけどな」

「造精剤なら任せといてよぉ。よければ媚薬も渡すよぉ」

「もう既に作ってあるような言い方すんじゃねぇ」

 親父のゲンコツが頭に降ってきたよぉ。半分冗談だったのにぃ。

 頭を押さえて唸りながら見上げるとぉ、怒りんぼな顔のおとーと目が合ったよぉ。そんでぇ、互いに吹き出したねぇ。

「大人の男の本気を思い知ったか」

「反省するぅ。心に刻むぅ。今受けた痛みの分はぁ」

「全然反省してやがらねぇの」

 ほとんどノーダメージだったからねぇ。けど親子っぽいから楽しぃ。楽しかったなぁ。

「アタイの人生をぉ、咲かせてくるねぇ。おとー」

「あぁ。キレイに咲けよ」

 おとーからもらう最後の水分はぁ、涙と鼻水になりそうだよぉ。

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