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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第9章 深怨のヴァリー
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589 最大級の弱さにワガママを添えて

 ヴァリーとの戦いを終えたボクたちは、寂れた教会の一角でフォーレが渡してくれた手紙をの内容を確認する。

 ちなみに受けた傷はボクの力で回復済みだ。

 客観的に見てハード・ウォールの復興は絶望的だという事。ヴァリー含むアンデット軍団が消えたおかげで最大の脅威が去ったと同時に、野生のモンスターに襲われるリスクが高まったと。

 皮肉にもヴァリーのいたぶるという(かせ)のおかげでギリギリ全滅していなかった。生かさなければいじめができないから。しかし野生のモンスターは余計な事を考えず、人を食料と見なして問答無用で襲う。敵を食らうのに手心を一切加えない。

 食料面も問題だ。元々都市と言えるほど土地を住むために改良、悪く言えば作物を作る環境を壊してきた。に加えて、争いによって荒廃(こうはい)してしまった土地。

 一からやり直すには(たくわ)えがなさ過ぎるし人も足りない。生きるために立ち向かう戦力もない。

 フォーレがバレないよう食べ物やその種を人に行き渡るよう(ほどこ)しをしていたらしいけれど、緊急時の一時凌(いちじしの)ぎもいいところ。

 種には未来があるけど、実るまでの時間が長すぎる。というか食糧支援までしていたとは思わなかった。

 だからボクたちが見捨てるのも、手を差し伸べるのも好きにしたらいいよとの事。助けるとなると防衛の面だけ見ても、ついてきている精鋭達の半分を護衛においていかないといけないと推測していた。

 次に魔王グラスと魔王フォーレ、どちらから戦うか。に対するお願いが書かれていた。

「で、タカハシ家の都合でグラスを最後にして欲しい。か」

 口に出すと、みんなボクの方を見た。一際(ひときわ)不安そうにしているのはアクアだ。けど意見は言わない。

「フォーレの提案、飲んでもいいんじゃない。もう一番強いのと一番上手いのしか残ってないんだもの。どっちにしろ厳しい戦いしか残らないわ」

「どう選択しようと、全力で暴れるだけさ。もうコインの裏表で決めていいんじゃないかい」

「楽観的に言いやがる。けどその方が悩まなくていいかもな」

 仲間達が意見を投げ合う。これからのために相談してくれる。一度見捨ててから大切な存在なんだと気付かされる。ボクは鼻で笑えてしまうバカ野郎だったんだな。今更ありがたさが身に染みる。だからこそ、話をまとめて決断せねばいけない。

「フォーレには助けてもらった義理もあるしね。フォーレの望みに従おう。それでいいかい、アクア」

 一度も視線を切らさずに見守っていて青い瞳を見ながら確認する。

「そっか。遂にフォーレと戦うんだ、私。楽しみだね。もしかしたら勝てないかも」

 笑顔を絶やさず吐く弱音。その内側に揺れる感情は何なのだろうか。

「私ね、フォーレとは兄弟の中で一番仲がいいの。だからね、戦ってもいいから、負けてもいいから、フォーレを失いたくない。だから決着が着いたら、私がいなくなってても、フォーレには生きてて欲しい。これさ、ヴァリー以上にワガママ、だよね」

 最後には(ちじ)こまりながら、視線を逸らしてアクアがお願いした。

「意外だわ。アクアがヴァリーより弱いところがあるなんて。ワガママでいえばヴァリーの方が圧倒的に上じゃない。アクアのはワガママに入らないもの」

 エリスが溜め息交じりに呆れた。

「なんかさ、ワシは初めてアクアを仲間として接しれそうだよ。ようやく弱い心を見せてくれたじゃないかい」

 頼もしい笑みをたたえるクミン。

「仲間っ()ぅのは弱い部分を支え合って乗り越えてくもんだかんな。一肌脱いでやろうぜジャス。さんざお世話になった後なんだかんな」

 ワイズはおどけながらボクへ同意を求めてきた。

「わかっているさ。次の目的地は神聖なるエルフの森、ヴァルト・ディアスだ。助けだそう。苦しめられているエルフ達も、魔王フォーレも、そしてアクアのお父さんも」

 アクアのお父さんの名前、なんだったけ。忘れてしまったけどボクは助けると決めたからな。タカハシ家よ。

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