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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第9章 深怨のヴァリー
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586 魂の解放

「どこー、ここー」

 真っ白で何もなーい。ヴァリーちゃんは何でここにいるんだっけー。

「よぉヴァリー。派手にやってくれたじゃねぇか。キヒヒっ」

 デッドが見下ろしながら笑いかけてきたー。おかしーなー。デッドは死んでるはずなのにー。

「まさかヴァリーともここで再開できるとはね。嬉しい限りだよ」

「おもしろい余興(よきょう)だったよね。ちょっと身体の感触(かんしょく)がおかしかったけども」

「アクアと相まみえれた事にだけは感謝しますよ」

 シャインにエアにシェイまでー。無様な負け犬達と知らない場所でどうしてー。あっ。

「待ってよー。ヴァリーちゃんひょっとして死んじゃったのー。あり得ないー。まだ生きてやりたい事たくさん残ってたー。完璧な勝利プランも立ててたのにー」

「そいつは気の毒だったな。確かにヴァリーは勇者共を手のひらで踊らせてたと思うぜ」

「敗因はフォーレに暗躍されていた事に気づかなかった事ですね。フォーレがヴァリー対勇者一行という盤上(ばんじょう)俯瞰(ふかん)し、(こま)を動かしていましたから」

「ヴァリーの悪巧(わるだく)み程度じゃ、フォーレの策略(さくりゃく)には(かな)わないよね。ボーっとした内側にとんでもない量の情報が入ってるんだもん」

「ヴァリーの(つつ)ましい胸に対してフォーレの豊満(ほうまん)なボディ。どちらが上かは誰が見ても明らかじゃないか」

「どいつもこいつも好き勝手言わないでよー。アンタら敗北者と違ってヴァリーちゃんは勝者なんだー」

 フォーレが邪魔してたなんて反則だってー。あんなマヌケにヴァリーちゃんが出し抜かれるなんてー。

「本気で勝つ気だったわりには、本来の姿で戦ってなかったな。死ぬまで舐めプしてたのはどうしてだよ」

「だってヴァリーちゃんの本来の姿ってかわいくないじゃなーい。姿を変えたところでヴァリーちゃん自身は強くならないしー」

「けど僕らを使役する精度は上がっただろぉが。それにスプラッタな姿も一部のファンには需要(じゅよう)あるだろぉが」

「ヴァリーちゃんは一部のファンじゃなくてー、みんなに愛されるアイドルじゃなきゃいけないのー」

 ゾンビみたいな姿で勇者に勝つなんてあり得ないでしょーがー。

「それにしてもこの場所どうなってるの。ヴァリーが死んでもまだ残ってる見たいだけど」

 え。ここってひょっとしてー、魂のストック場所?

「自分たちがまだここに残っているのは不思議ですね。現世を眺める機能は失われてるみたいですけど」

「ヴァリーは死んでなお、この場所を維持(いじ)しているのかい?」

「イヤ。イヤイヤイヤイヤーっ! 死んじゃったヴァリーちゃんがこの場所を維持できるわけなーい。こんなの穴の空いた水槽に空気が残ってるだけの状態だよー」

 ヴァリーちゃんが叫ぶとー、白い空間がヒビ割れ出したー。魂をストックしていたケースが壊れだしてー、禍々しい地獄の景色が垣間見えてるー。

「ヤダー。地獄になんて行きたくないー。寒気がしておどろおどろしおくて怖いよー」

「おや、アレが地獄の景色ですか。静かな闇ではないですか」

「暴風ビュービューだね。飛び出したらバラバラにされそうだよ」

「なんと光りにあふれた地獄だろうか。たくさんの美女が笑いかけながら手招きしてるではないか」

「テメェらホントに同じ地獄が見えてんのか。ボクには毒々しい空気が漂ってるように見えるぜ。あとシャインは何ちゃっかり楽園へ向かおうとしてんだ」

 ひび割れはヴァリーちゃん達を(おお)う球体のように走ってー、一欠片(ひとかけら)ずつ白い壁が()がれ落ちていくー。

「ヤダヤダヤダヤダー」

「ほんと、最後の最後まで往生際が悪いですね。世話の焼ける妹です」

「シェイって下から二番目のわりにはお姉ちゃんだよね」

「素晴らしき姉妹愛じゃないか。ミーも鼻が高いよ」

「いいからさっさと()こうぜ。いつまでもこんなトコ居続けてもしょうがねえかんな」

 デッドが先陣を切って地獄へと歩いて行くー。ためらう事なくー。

(しゃく)ですね。デッドに先を越されるなんて」

「あははっ。みんな(いさ)ましいね。ウチは怖いよ。けど、ワクワクしてる」

(いた)(かた)あるまい。ミーも続くとしよう」

 続いてシェイ、エア、シャインも地獄へと歩んでいくー。

「待ってよー。ヴァリーちゃんをこんな所に一人にしないでってばー。独りぼっちはイヤだよー」

 置いてかれないように立ち上がってー、走ってみんなに追いついたー。

 どんな地獄よりもきっとー、一人きりの地獄の方がツラいもーん。すっごくイヤだけどついて行ってあげるんだからバカーっ!

 こうしてヴァリーちゃんが(とど)めていた魂達は、ヴァリーちゃんと一緒に旅立ったんだー。(くや)しくなんてないんだからー。わーっ!

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