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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第9章 深怨のヴァリー
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560 見る者の戦意を折る外観

 久しぶりに剣を振り、戦いに意識を向けてみる。身体を動かして感覚は少し戻ってきたように感じたけれど、心はフワフワしたままだった。

 こんなコンディションでタカハシ家と戦うのはとても不安だ。けど崩壊した街で、いつ魔物に襲われるかわからない環境で、怯えながら暮らす人々を待たせるわけにもいかない。

 それに、時間をかけてもコンディションはよくならないだろう。

 だったら、動くのは早い方がいい。

 二日。ハード・ウォールに着いてたっぷり二日休んだボクは、ワイズとクミンを連れて魔王ヴァリーの魔王城へ向けて出発する。

 エリスとアクアへの挨拶はワイズとクミンに任せた。正面から顔を見る度胸は、ボクにはまだ存在しないから。

 崩れた道をかき分け、壊れた外壁を越え、魔王城が建っているという崖へと向かう。

 道中で無数のアンデットに襲われるが、ボクたち三人で難なく殲滅(せんめつ)できた。いくら(なま)っているとはいえ、ただの魔物を相手に後れをとったりはしない。意表を突かれたならまだしも、正面から数だけで押してくるなら問題なかった。

 進行を続けていくと、何もないところにポツンと建つ巨大で(いびつ)な建物が見えてきた。

「まさか、アレがヴァリーの魔王城なのか」

 確かに今まで見てきたタカハシ家の魔王城はどれも似つかない異質な外見だった。けれどどれもが接敵する有象無象(ゆうぞうむぞう)蹴散(けち)らす威圧感は持っていた。

 今見えている魔王城には、ソレがない。

「おいおい、随分と(ぜい)()らしてそうじゃねぇか。小汚い服と装飾で入って怒られねぇだろぉな」

「魔王の居城と言うより、貴族の別荘って感じだね。ある意味で乗り込むのに気後れするじゃないかい」

 見るも見事な白壁のお城なのだ。品も悪くない。天を貫くような尖塔(せんとう)もたくさんあって、落ち着いた空色の屋根をしている。門も大きくて威厳に溢れていた。

「なんだか気後れしてしまうね。目的地を間違えていたらと考えると、ゾっとするよ」

 来る者を(こば)むという意味では、一番効力がある外観かもしれない。身の丈に合わない豪華な場所は、慣れていない者を萎縮(いしゅく)させる。

「やめろジャス。最悪の状況を考えさせんな」

「どの道おかしな場所に建ってるのは間違いないんだ。とりあえず調べるよ」

 もしかしたら一貴族が暮らしている城に乗り込んでしまうのではないかというケースに恐怖を覚えつつも、クミンに叱咤(しった)され進む決意をする。

 確かに建っている場所がおかしい。それにこんな所で孤立しているては、アンデット達の格好(かっこう)の的になってしまう。

 近付くにつれ異質さは増していく。いや最早、貴族の城としてあり得ない。

「なんだこの城。まるで空に浮いてるみてぇじゃねぇか」

「ちゃんと城の下に地面はあるよワイズ。切り立った崖の向こうに居を構えてるけどね」

 その豪華な城は断崖絶壁(だんがいぜっぺき)で切り離されていて、本当に孤立していた。こうなってくると乗り込むどころの騒ぎじゃない。

「いや、よく見ると道が延びている。やけに曲がりくねっていて長い一本道だけれども」

「魔王城確定だな。人力でこんな場所に城なんか建てっこねぇし、城へ続く道も明らかに造られてる。こんなん自然に出来っこねぇ」

「道幅は広いから問題なく渡れるけども、落ちたら一巻の終わりだね。こりゃ覚悟がいるよ」

 待ち伏せや罠を張るなら間違いなくこの危険な一本道だ。城外に敵を拒む環境が調えられている。

「行こう。覚悟なんてとっくに決まっているのだから」

 いくら危険でも進むんだ。ボクたち三人で打倒する為に。魔王ヴァリーを。

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