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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第9章 深怨のヴァリー
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557 描いたシナリオ

「何を言い出すかと思ったら、わかってるわよ。最弱って言っても、あくまでタカハシ家の中でって話でしょ。ワイズやクミンだって重々(じゅうじゅう)承知(しょうち)だってば」

 改めて念押しされるまでもないって。タカハシ家はどいつもこいつもふざけた強さを誇っていたからね。例外があるとしたら、女性を相手してる時のシャインぐらいだわ。

 懸念(けねん)なんて吹っ飛ばすように軽く返す。けどアクアは青い瞳をマジメに光らせる。

「エリスも薄々気付いてると思うけど、私たちタカハシ家は勇者を殺してしまわないように加減しながら戦ってるよ」

 今更確認をとるまでもないわ。面と向かって言われるとムッときちゃうけども。舐めんなって言い返してやろうかしら。

「私たちは最善の形で敗北する為に勇者に戦いを挑んでる。今、悔いが残らないように生きる為に。けどヴァリーはそんなこと知ったこっちゃないって感じで、全力で勝ちを取りに来て、未来まで生きようとする」

 なんとなく、ゆるくなっていた戦場の空気が霧散していくのを感じた。アタシ達はどこかで、タカハシ家に殺される事はないって思い込んでいたから。

「ちょっ、なんでよ。戦ってて舐められているような感覚は確かにあったけど、ソレはアクア達の目的あっての事でしょ。どうしてヴァリーはルールを破るのよ」

「ヴァリーはワガママだから。みんなで描いた目標より、自分の為の未来を選ぶ。わざと負けるなんてあり得ないって。いくら一番弱いっていっても、全力で殺しにかかる相手だったら話は変わっちゃうでしょ」

 かなりヤバいじゃない。もし今まで戦ってきたタカハシ家の中で一人でも全力を出していたら、アタシ達はとっくに全滅してるはずだもの。

「残っている中でフォーレが相手だったらまず安心していいと思う。戦い方が上手な分、加減も上手いから」

 アクアは指を一本立てて説明する。続いて二本目を立てる。

「グラスは一番強いけどマジメだし、ルールは(やぶ)らない。けど根っからの武闘派で加減が苦手だから、もしもが起こる可能性がある」

 そして三本目の指が立つ。

「で今回戦うのヴァリーは一番弱いけど、加減しないって意味では一番危険な相手なんだよね。しかもワイズが立てた作戦がイヤというほどマッチしちゃってる」

「ジャスを立ち直らせるってやつ?」

 聞き直すとアクアは頷いた。

「ワイズはクミンと一緒に戦死する事で、ジャスの戦意を怒りと憎悪で湧き上がらせる。そんなシナリオを描いていると思う。勿論、最悪でもって、枕詞(まくらことば)がつくけど」

 死ぬ? ワイズとクミンが。

「冗談でも言っていい事と悪い事があるわよアクア!」

 反射的に怒鳴ってしまう。いくらジャスを立ち直らせる為だって、自らを犠牲にする作戦なんて考えるわけないわよ。ないよね。

「殺す策略で待ち構えるヴァリーに、死ぬ覚悟で戦いに挑む勇者の仲間達。ソレが今回の戦いの構図だよ。だからエリス、私たちにも出番回ってくるから。失う覚悟と、戦う準備しといてよ」

 澄んだ水の先を見据えるように、残酷な未来を突きつけてくる。

「意味わかんない。第一そうなったらジャスは一人きりじゃない。途方に暮れるジャスをあの二人が置いてきぼりにするはずないわ」

「たぶん、私たちに押し付けるつもりだろうね。ニュアンス的には、ジャスの事を頼んだぜって、(たく)す感じなんだろうけども」

 イヤに決まってんでしょ。責任とか、いろいろ重すぎるわよ。ワイズ、荒療治(あらりょうじ)なんて失敗してもいいから、全員で生きて戻ってきなさいよ。

 後でワイズに直接文句を言おうとは思うんだけど、悪い空気が(まと)わり付いて消えなかった。

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