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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第9章 深怨のヴァリー
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550 壊滅都市ハード・ウォール

 馬車に揺られて何日経っただろうか。毎日のように続く、活気の言い特訓の声を聞き流しながら僕は自信に問いかける。

 勇者を続けるべきか、否か。

 わからない。けど、ワイズが頼ってくれた。なら助けになりたい。し同じ視線で遊んでみるのもいいかもしれない。

 それ以上は、今はいい。街を救うだとか、犠牲をゼロにするだとか、そんな大それた望みは持たない。

 隣に立つ仲間さえ守れれば充分。過ぎた欲は身を滅ぼす。滅ぼした。ボロボロだ。

「おーいジャス。生きてっか」

 馬車の片隅で縮こまっていたら、ワイズが失礼な物言いで覗き込んできた。

「死ぬほど弱っちゃいないさ。どうしたんだい」

「ようやく鬱蒼(うっそう)とした森を抜けたんだ。大変だったぜ、森の獰猛(どうもう)な魔物も()る事ながら、ゾンビやスケルトンといったアンデットの群れにまで襲われたんだ。撃退するのも骨だったぜ」

 おどけるように語るワイズは、聞き捨てならない単語を口にしていた。

「アンデットが生息する森。どこだ?」

 ボクたちの進行ルートにそんな場所はなかったはず。もしかして大きく進路が()れてしまっていたのでは。

「ハード・ウォール近くにある森に決まってんだろ。なぜかアンデットまで群がるようになってたけどな。精鋭達が必死こいて戦ってくれたぜ」

 いなかった魔物が湧いている。魔王ヴァリーの影響か。ハードウォールはかなり規模が大きい街だ。もしも街全体を囲うようにアンデットが湧いていたとしたら、とてつもない数になる。

「とにかく、いっぺん外の空気でも吸おうぜ。視界が開けて気持ちいいんだ。もしかしたらハード・ウォールが見えるかもしれねぇぜ」

 森の抜けた場所からハード・ウォールが見えるかも?

「おかしい」

「やっぱさすがにおかしいか。かなり近付いたとはいえ、まだまだ遠いからな。見えるはずねぇよな」

「逆だ。昔森を抜けた時、ハード・ウォールの外形(がいけい)がクッキリと見えたんだ。なのに見えないだって」

「え?」

 何年前だったかはあまり覚えていないけど、森を抜けた時に見たハード・ウォールの大きさに驚いた事は今でも覚えている。

 戸惑うワイズを他所に馬車の外へと出る。眼前に広がる地平線。後方には森の入り口が確認できる。

消えている。ハード・ウォールの景色が。もうイヤな予感しかしない。

「おいおい。やっぱ見ねぇじゃねぇか」

 手で(ひさし)を作り、遠くを眺めるワイズ。

「急ごうワイズ。もしかしたら、思ったよりも深刻な状況かもしれない」

 馬車を急がせて三日後。強固だった外壁が崩れ去っている、崩壊しきったハード・ウォールにボクたちは到着したんだった。

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