545 暗躍の芽
タカハシ家二階建て一軒家のぉ、二階の窓からヴァリーが旅立ったのを確認するよぉ。
「出かけたねぇ、勇者と戦う為にぃ」
「フォーレも行くんだろ。ヴァリーが暴走しすぎたら父さんが困ってしまう」
アタイと同じようにぁ。グラスがヴァリーを見下ろしてるぅ。
「バレないように時間をおいてからねぇ。ヴァリーのワガママを通させるつもりはないしぃ、アクアのサポートもしたいよぉ」
「お前らはホントに仲がいいな。まぁアクアに注目する理由もわからんではないが」
グラスも何だかんだでぁ、アクアの事認めてるからねぇ。
「ところでグラスぅ、アタイも武器を嗜みたくなったんだよねぇ。作ってぇ」
気付いたらみんな武器を使ってたからねぇ。アタイだけ武器なしはちょっと寂しいかなぁ。
ねだってみたら溜め息が返ってきたぁ。お前もかみたいな感じぃ。
「っで、どんな武器が望みだ」
めんどくさそうだけどぉ、作ってはくれるみたいだねぇ。アタイは口元に人差し指を当てながら天井を眺めたよぉ。
「んっとぉ。意外性があってぇ、取り回しが単純な武器がいいかなぁ」
「抽象的すぎる。具体的に」
「ビーチバレーボールぐらいの鉄球に鎖がついてるやつぅ。鎖は両肩から両脇にぃ、クロスするように身につけるんだぁ」
「チャン・○ーハンじゃないか!」
白衣姿に鉄球装備はぁ、絶対にド肝を抜かせると思うんだよねぇ。
けどアクアを驚かせるにはぁ、ヴァリーを敗北に導かないとだよねぇ。なんたってぇ、おとぉの背中を押したのはアタイなんだからぁ。
チェル様に憧れていた昔のおとぉはぁ、大きな恋の蕾だったんだよねぇ。咲かせたら絶対にステキな事になるってぇ、傍にいるだけで感じられたぁ。
だからぁ、実らせる事にしたぁ。例えアタイが最後まで見届けられなかったとしてもぉ、凜と咲いた姿はとてもステキでかっこいいと確信したからぁ。
ヴァリーも蕾を咲かせる為の肥料だけれどもぉ、いきすぎた栄養は毒にもなっちゃうからねぇ。腐らせない為にもぉ、枯らさない為にもぉ、ヴァリーには散ってもらわなくっちゃぁ。
「アタイとヴァリーのタカハシ家最弱決定戦をやってる間にぃ、鉄球の制作頼んだよぉ」
「待て、ホントに鉄球で戦うつもりか。それに最弱って、フォーレの方が確実に強いだろうが」
身を乗り出しながら大声でグラスが叫ぶよぉ。今回はボケたつもりなかったんだけどなぁ。
「フィジカル面だけみれば間違いなく最弱はアタイだよぉ。ヴァリーも弱さでは負けてないと思うけどねぇ。だからぁ、証明してくるよぉ」
「戦いはフィジカルだけじゃない事を証明したのはフォーレだろうが。それに、タカハシ家で最弱といったら父さんじゃないか?」
「おとぉの弱さは殿堂入りだよぉ。比べちゃいけない高みなんだよぉ」
誰もが認める弱さだからねぇ。だからこそぉ、保護欲に駆られちゃぁう。
「もういい。昔から口でフォーレには勝てないよ」
「どういたしましてぇ」
笑顔でお礼を言うとぉ、グラスはガシガシと頭を掻いたねぇ。
「あー。フォーレなら問題ないと思うが、しくじるなよ」
思ったより信頼されてるねぇ。アタイも頭を全力で回さなくっちゃぁ。
「期待には応えなくっちゃねぇ」
ニマリと笑顔を見せるとぉ、グラスも安心したように微笑んだぁ。
ヴァリーから遅れて一日ぃ。アタイもハード・ウォールへ向けて出発したよぉ。




