544 死の上で堪能する生
ここ数日はパパを独占できて充実してたねー。おかげでやる気満タンだよー。
チャチャっと行ってきてー、サクッと勇者を殺って帰ってこなくっちゃー。
二階建て一軒家の玄関でー、心配そうに眉を下げてるパパと見つめ合うよー。
「もー、そんなしょげた顔しちゃダメだよー。もっとスマイルして送り出してくれなきゃー」
ヴァリーちゃんが両手のほっぺに人差し指をつけながらニコってするとー、パパは苦笑をしながら頭を撫でてきたよー。
「そうだな。めいっぱい楽しんでこい。悔いの残らないように、全力でな」
むー、まだヴァリーちゃんが勝つ事を信じてくれてないねー。けどいいもーん。結果を示したらー、パパだってヴァリーちゃんを褒め殺しちゃうんだからー。
「吉報を待っててよねー。ヴァリーちゃんにかかればー、勇者なんてケチョンケチョンなんだからー」
堅苦しい正義感を利用すればー、勇者なんて手も足も出ないでしょー。みーんなバカみたいに真正面から戦いすぎなんだよねー。
「ほんとヴァリーは悪い顔がかわいいな」
「キャハ。褒め言葉として受け取っておくねー。ギュー」
「ヴァリー」
パパに正面から抱きついてー、胸に顔を埋めちゃーう。ドギマギしてくれてるかなー。ヴァリーちゃんはホッとしてるよー。落ち着く匂いがするもーん。
「それじゃー行ってくるー。お土産は期待しててよねー」
パッと離れてー、背中越しに玄関を開けて跳び出てからー、大きく手を振るー。
「いってらっしゃい。ヴァリー」
パパが小さく手を振っている姿がー、閉じるドアに遮られたねー。
ホントに待ってよねー。ヴァリーちゃんは絶対に帰ってくるんだからー。
クルリと回れ右してー、鼻歌交じりに地下鉄を目指すよー。曲はアイドルアニメのオープニングを気ままにメドレーしちゃってるー。
そうだよねー。ヴァリーちゃんが直接手を下すまでもないんだよねー。
足りない手駒を現地で調達してー、配置して罠にハメるだけの簡単なお仕事なんだからー。メンタルさえ揺さぶればー、過剰な力なんて不要なんだよー。
あー、勇者が堕ちるところを想像するだけで笑みが止まらないやー。ついでにアクアもチョチョイとやっつけちゃってー、思いっきり見下してやらないとねー。
重要なのは環境とタイミングかなー。
「やっぱりヴァリーちゃんってば天才だねー。勇者を貶める策が次々に浮かんじゃうんだもーん」
ヴァリーちゃんの幸せは誰にも邪魔させないよー。だって人は見んなー、たくさんの屍の山の上に生きてるんだもーん。より殺せる者が幸せを掴み取るのは道理だよねー。キャハ。




