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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第8章 色欲のシャイン
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538 決別の宣言

 シャインも倒した事だし、ちゃちゃっと次の目的地を決めて出発する。と思ってたんだけど、何だかんだで女性の町に滞在して二週間ぐらい経ってるんだよね。

 ハスナ達が放っとけないのもあって、毎日の襲いかかってくる砂漠の男共から守ってあげてるんだ。直接的にも、間接的にもね。

 エリスと一緒に最前線に出ては防衛したり、町の女性達の訓練を受け持ったり。

 立ち止まってはいたものの、なかなか充実した日々だったよ。

 私たちが守っている間に、ハスナはジャス達に相談事を持ちかけてた。

 ロンギングの精鋭(せいえい)達の中から三人ぐらい、町を守る衛兵として残ってもらえないかと。

 砂漠の男達は信頼できないけれども、女性だけではいずれ侵略されてしまう。そして何より、次の世代を産んで育てる事が出来ない。

 そう、どこかで女性達を認めてくれる男を受け入れなければならない。

 かといってさすがに勇者自身やその仲間を引き入れるわけにもいかない。けどついてきた精鋭達はその限りでもないのでは、との考えみたい。

 勇者が同行を許可しているのなら、性根が悪い可能性も少ない。

 話を聞いたジャスだったけど、あんまり考えがまとまらなかったらしい。だからクミンとワイズと話し合った(てい)で、比較的砂漠に適応した精鋭をこの地に残す事を決定した。

 勿論、本人達の了承も得たよ。当分は男性の方が少ないから一夫多妻制を採用するって。

 男の人、三人で足りるかな? かなりがんばらないといけない気がするんだけど。

 とはいえいつまでも不安要素を引っ張っても仕方ないよね。

 人生なんてなるようにしかならないもん。

 いつものように屋敷の部屋でエリスと休んでいる夜に、ワイズが尋ねてきた。

「お休み中済まねぇなアクア、エリス。今時間あっか」

「いらっしゃい」

「どうしたのよワイズ。まさか夜這(よばい)いじゃないでしょうね」

「よせよ。俺の命が足んねぇっての。それよか今後の方針についてだがよ、お前ら(しばら)くパーティから外れてくれ」

 ワイズの冷たく切り捨てるような発言へ、エリスが剣呑(けんのん)に眼を光らせた。

「は? まさかパーティ解消するほどアクアが邪魔なの。それともアタシの実力がまだ足りてないのかしら」

「悪ぃとは思ってる。それとあくまで一時的な対処、いや応急処置だな」

 不穏な言い換え方だね。その言い回しだと、やっぱり根源(こんげん)はジャスか。

「そんなにジャスの調子悪いの」

「すっかり自信が砕け散っちまって、見るに堪えねぇ茫然自失(ぼうぜんじしつ)ぶりさ」

「情けないわね。勝手にアクアを敵視して、敗北気分で消沈しちゃってるなんてさ。ホントに勇者なの」

「ダメだよエリス。仲間なんだから(はげ)まし合っていこう」

 溜まっていた鬱憤(うっぷん)を吐き出すような暴言。ワイズも苦い顔しちゃってるから抑えてほしいな。

「いいんだアクア。今のジャスはどう見たって尊敬できねぇかんな。けど、オレとクミンからしたら付き合いの長い戦友なんだ。見捨てらんねぇ」

 切なそうに目を伏せるワイズに、エリスが目を泳がせる。

「だから自信を取り戻させる為にも、次はオレ達三人でタカハシ家と戦いてぇんだ。この町でアクアが化け物の姿になってまで戦ってるのを見てよぉ、ジャスのヤツ正義ってなんなんだ? なんて疑問を口にし出しやがった」

 想像以上に思い詰めちゃってない。そんな状態で私が外れて大丈夫なんだろうか。

「普段通りだったら力尽くでアクアを止めようとしてるのを考えると、な。らしくなさ過ぎるだろ。だからオレらで気合いを入れ直してやろうと思ってな」

「まっ、ソコまで言うならワイズの意見を汲んでやるわ。けど、本当に危なかったら助けを呼びなさいよ。ワイズとクミンくらいは守ってあげるから」

 エリスってば、顔をフンってさせながら言うんだから。そーいうところもかわいいんだよね。

「っで、だ。本来ならジャスを中心に決めなきゃいけねぇんだろぉけど、アクアは次の目的地はどこがお勧めだ?」

 あれ? その選択肢を私に(たく)しちゃう。

「んー、できたら私抜きで決めてほしい。けど()いて言うなら誰もお勧めしないかな」

「色んな意味でイヤな回答じゃねぇか。理由は聞いても?」

「残ってる兄弟は後三人。純粋にフィジカル面で一番強いグラス。戦略に長けていて戦うのが一番上手いフォーレ。んでもって弱いけれど一番非道な手段を得意とするヴァリーだね」

「ちょっとアクア、全員一番がついてるんだけど」

 エリスってば呆れないでよ。私達タカハシ家は特化してる部分を見ればみんな一番になれるんだもん。

「その説明だとグラスってヤツはまずなしだな。フォーレかヴァリーはやり方次第で希望が持てそうだ。って事は、次のターゲットはヴァリーの方か」

 ワイズは腕を組みながら考え込み、結論を出した。

「ヴァリーかぁ。私個人としてはありがたい選択だね。弱いのは確かだけど得体が知れないから。なんって言うか、後に回すほど厄介になりそうなんだよね」

(こえ)ぇ事言ってくれるなぁ。けど参考にはなったぜ。これからジャス達と相談してくるが、まず決定だと思って待っていてくれ」

 用事を終えたワイズが出て行ってから、私とエリスは眠りについた。

 そして翌朝。私はクミンから、次の目的地がヴァリーの支配するハード・ウォールだと告げられたよ。

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