532 魂の支配者
縦長に長ーいテーブルの端っこに座ってー、ルンルン気分でデザートを待ってるのー。
椅子はクッション性があって座り心地がいいしー、銀製できめ細かに装飾されてるから贅沢感があるんだよねー。
白亜の壁には金の燭台が等間隔に並んでてー、美しい風景画やヴァリーちゃんのバッチリ決まってる肖像画も飾ってあるよー。
高ーい天井からはシャンデリアもぶら下がっていてリッチな気分ねー。
あー、カラカラとワゴンを引く音が聞こえてきたー。
素材の味を生かした木製の扉からノックが鳴ってー、燕尾服をビシッと着こなした従者がお辞儀をして入ってきたよー。
まー、お顔がしゃれこうべのスケルトンなんだけどねー。
当然お喋りなんかもできないからー、無言で配膳を続けてるー。
ワゴンを近くに止めてー、銀色の丸い蓋が被さっているお皿を配膳してくれたよー。オシャレな蓋だよねー。クローシェって言うんだってー。
でー、筋張った白い骨の手でクローシェを取ってもらうとー、リンゴの風味を含んだ香ばしい香りがお部屋に充満したよー。もー匂いだけでほっぺた落ちちゃーう。
死神みたいな宙を浮いている従者にダージリンティーを淹れてもらって準備ばんたーん。
ナイフを入れたザクって感覚だけでもうおいしさが伝わってくるよねー。一口食べるとー、リンゴの風味と甘さあが広がってくるのー。もう堪んなーい。
「んー、アップルパイ最高ー。ハード・ウォールの街から腕利きのパティシエを攫ってきた甲斐があるねー。にしても予想外だったなー。まさかシャインに魂ストックしてるのバレちゃうなんてねー」
バレたところで死者に抗う術なんてないんだけどー。キャハ。
「はー美味しー。死んじゃったらこーんな美味しいデザートも食べられないんだもんねー。かわいそー、恵んであげられるなら恵んであげちゃうのにー。キャハハっ」
絶対ムリだけどねー。
「コレでストックしてる戦力は四人分だからー、最低限は揃った感じかなー。アクアも死んでくれてら充分だったのにー、しぶといったらないよねー」
アクアってばホントKYすぎー。
「早いとこグラスやフォーレとあたって相打ちしちゃえばいいのにー。そうしたらー、最後にはパパとヴァリーちゃんが残るわけだからー、思う存分甘えられるよねー」
勇者には負けなきゃいけないとかみーんな言ってるけどー、人生なんて生きて楽しんでなんぼだもーん。パパが死んじゃうなんて論外だよー。
ヴァリーちゃんと戦う事になったらー、この世から退場してもらわなくっちゃー。その為のプランだって整えてあるんだもんねー。
んー、ダージリンも上品な香りー。やっぱりヴァリーちゃんの人生は甘々じゃなくっちゃねー。




