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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第8章 色欲のシャイン
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531 魂の牢獄

 ここ、どこ? なんか世界が真っ白なんだけど。

「気がつきましたかエア。お疲れ様です、いい戦いでした」

「まっ、最後はみっともなく泣きじゃくってたけどな。キヒヒっ」

 微笑みに優しさを滲ませながら労うシェイ。からかうように嘲笑ってくるデッド。

「シェイ? デッド? 二人とも死んだんじゃなかったの」

 もう出合うはずのない二人に驚いて声を上げる。生きてるんだったら父ちゃんのところに帰ってきてくれなくちゃ。二人の生存を知ったら、父ちゃん泣いて喜ぶよ。

「僕もシェイも死んだに決まってんだろ。何勘違いしてんだっての」

「え?」

「そしてエアも死にました。よくわかりませんけどここで、自分たちの魂は留まっているようです」

 ウチも死んだ? そうだ。最後はエリスの矢におでこを貫かれたんだ。

 おでこを手で擦ると、腕の青アザがすっかりなくなっていることに気付く。治ってる、っていうより傷がなくなってる感じかな。

「そっか。楽しい人生だったな。っていうか見てたの?」

「意識をすれば現世の状態を()れるみたいなんです」

「どういう原理かしんねぇけど、便利な空間だぜ」

 試しに愛の巣がどうなったか視てみると、崩壊するところを無事に脱出しているアクア達が脳裏に浮かんだ。

「見えた。凄いね。神様ってやつも(いき)な事してくれるね」

 便利なのはいいんだけど、なんかイヤな感じがするんだよね。この空間。真っ白いだけで味気ないのはこの際おいておくとして、どこか安心できない予感がする。

「むっ、ここは?」

 あたりを見渡していると、シャインの間抜けな声が耳に届いた。気がつくと傍にシャインが立って、疑わしげにあたりを見渡している。

「あそっか。シャインも死んだんだもんね」

「あぁ、来ちゃいましたか」

「追い出す事もできなきゃ追い出し方もわかんねぇかんなぁ。あんま変な事すんじゃねぇぞ」

 シェイが落胆して、デッドが頭を掻きながら吐き捨てる。シャインってば信頼されてるな。悪い意味で。

 歓迎されてないムードでシャインに声をかけたんだけど、聞こえていないのかマジメな表情で白い空間を見渡し続ける。

「あ? おい聞いてんのかシャイン」

「視界に入らないのならその方がありがたいのですが」

「なんという事だ。やれやれ、おいたの過ぎる妹だ事だ」

 シャインはデッドとシェイの苦言を気にも留めず、(なげ)かわしいとばかりに頭を押さえて首を横に振る。

「えっと、シャインから見て妹って、シェイかヴァリーだよね」

 とりあえず近くにいるシェイへ視線を向けると、首を横に振られた。

「自分は特に、何かをしているつもりはありませんけど」

「じゃあヴァリーって事か。何がわかったんだよシャイン」

 デッドが消去法で答えを口にしながら、シャインに注目する。

「ミー達の魂は、ヴァリーが作った魂の牢獄、ヴァリーらしく言うなら魂の飼育ケースに(とら)われている状態だ」

 ヴァリーがウチ達の魂を、この空間に?

 衝撃に任せて白い空間内を見渡す。何もわからないけど、不気味さだけは増した気がする。シェイとデッドも動揺してる。

「確証はあるのですか?」

「シェイはミーとは性質的に正反対だと言っていたね。けどミーはそんな事は思っていなかった」

 え、正反対でしょ。シェイが大雑把に闇で、シャインが大雑把に光。うん。やっぱり正反対だよ。

(むし)ろミーと正反対なのはヴァリーさ。ミーが(つかさど)る力が(せい)とするなら、ヴァリーが司るのは死だからね。司る力が生死という軸にあるからこそ、感じ取れるのだよ」

「マジか。ひょっとしよぉ、先に死んだシャインよりも、後から死んだエアの方が先にこの空間に来たのも関係してんのか?」

 デッドの指摘(してき)を聞いて気付かされる。確かにウチよりもシャインの方が遅れて現れたって。

「恐らく(せい)の力がこの空間を拒絶した。故に、ミーの魂を取り込むのに時間がかかったのだろう」

「けどさ、どうしてヴァリーはウチ達の魂を閉じ込めたのかな。寂しかった、からとかじゃないよね」

 言っておいてなんだけど、ヴァリーの性格からしてなさそうだよね。

「そんなかわいい性格じゃねぇだろアイツ」

(ろく)でもない予感しかしませんね」

 デッドが呆れて、シェイが同調する。

「心しておきたまえ。ヴァリーはミー達の魂を戦いで使うつもりだぞ」

 だよね。思い出してみると戦いが終わる度に、みんなに死んじゃえばよかったのにとか言ってたっけ。すんごい露骨(ろこつ)だったのに、気付けないもんだね。

「ん? マジか。って事はヴァリーのやつ、かなりえげつない事する気だぜ」

 デッドが何かを思い出したかのように苦い表情をする。

「既に充分にえげつない予感がしますが、デッドは何に気付いたのですか」

「ロンギングを襲撃した時によぉ、アイツたぶんマリーの魂もストックしてやがったぜ」

 うっわー……

 デッドの発言でみんなの顔が(しぶ)くなったよ。

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