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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第8章 色欲のシャイン
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530 置き去り

 エアのおでこに矢が深々と突き刺さって、無造作に床へと()ちて転がる。

 好奇心に溢れた黄色い瞳は、もう光を映していない。

「エア」

 時が止まりそうな衝撃の中、(とど)まる事を許さないとばかりに愛の巣が崩壊していく。

 愛の巣は魔力の供給(きょうきゅう)がなくなったから、形を留めておけない。シャインも死んだから。

 (ほとん)ど外傷なく横たわっているシャイン。命が抜けているなんて信じられないくらい整っている。

「シャイン」

 二人とも質は違っていても、とても賑やかな性格だった。よくも、悪くも。

「アクア、ゴメン。アタシ」

 エリスが視線を逸らしながら、主旨(しゅし)のない謝罪をしてくる。後ろめたくて、恐怖心に押し潰されそうになってるのがありありと伝わってくる。

「エリス」

 まるで許されない過ちを犯しちゃったみたいな罪悪感を抱えちゃってる。

 私はエリスの真正面に立って、ぶら下がっている左手を両手で掴んで胸ぐらいの高さまで上げた。

「おめでとう。エリスはお父さんの(かたき)を立派に討ったよ。私の自慢の妹に勝ったんだよ。だから、めいっぱい喜んで」

 声を弾ませて、おもいっきり明るく励ます。

「喜んでって、アクア」

「喜ばなきゃダメだよ。勝ったのに申し訳ない顔をされたら、負けた側が、エアが浮かばれないから」

「お喋りしてないでさっさと脱出するよ。ワシがジャスを運ぶから、アクアとエリスはワイズを運びな」

 クミンが怒鳴り散らしながら、ジャスの救出へと向かう。

 確かにいつ完全崩壊してもおかしくないくらい、愛の巣が揺れたり砂埃(すなぼこり)が舞ったりしてる。このままじゃムダに、エアやシャインと一緒に埋まっちゃう。

「とにかく今は逃げよっかエリス。早くしないと愛の巣、本当に崩れちゃうから」

「アクア。そうだね、行こう」

 エリスはどうにか気持ちを切り替えれたみたい。頷くと、走ってワイズの元へと向かったよ。

 私も追おうとしたんだけど、不意に立ち止まって振り向いた。

 置き去りのエアとシャイン。既に砂埃が薄らと()もっている。

 どこまでも自由に最後まで生ききった妹。

 果てしなく愛を求めて女に彷徨(さまよ)った弟。

「エア、シャイン。さよなら。ん?」

 足下に転がり込んできた物を拾ってから、エリスの後を追ってワイズの救出をする。

 出入り口が近くにあった事も(さいわ)いして、全員無事に脱出できた。近くに控えさせていたロンギングの精鋭達と一緒に遠くまで避難をして、愛の巣が崩壊するのを見守る。

 砂塵(さじん)が吹きすさぶ砂漠に、愛の巣があった事を示すような大きな瓦礫(がれき)が頭を出して沈んでいた。

「終わったねえ、行くかい。愛の巣の女達のための、女達による新しい町へ」

 クミンが言うには、シャインはこの時の為に女達の避難場所を作って、自衛(じえい)できるよう鍛えていたらしい。

 案内するクミンに待ったをかけて、私は脱出寸前で拾ったシャインのユニコーンホーンを手渡した。

 エアの最後の悪あがきで吹き飛んでたのが、たまたま私の元に転がってきたみたいだからね。

 クミンは別に要らなかったんだけどと言うように、苦い顔で受け取ったよ。


 それとコレは別の話。

 エアが死んだ事によってソル・トゥーレに立っていたエアの魔王城、大空への塔も崩壊したんだよね。

 っで、たまたま祭り上げられていた新たな空の勇者とその一行が登っている途中だったわけで、まぁ、お察しなわけだよ。うん。

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