表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第8章 色欲のシャイン
527/738

526 一角

「その真剣な眼差し、いいね。綺麗すぎてゾっとするよクミン。やはり本気になったレディは美しい。ミーも全力で応えねばなるまい」

 今度こそ本気で戦いにくるのかい。シャインはマジメな顔つきでふざけた事をやってのけるから判断に困るんだよ。けど。

 緊張感で肌がヒリつく。充分に距離が離れているというのに目が離せない。こんな距離、シャインなら一瞬で潰してくる。

 対峙(たいじ)しているだけで汗がジワついてくるよ。

()な。シャインの全力、叩き潰してやるよ」

「頼もしい。いくぞ!」

 かけ声と同時に、一直線に駆けてくる。前傾姿勢で、額の角を突き出しながら。

 目を凝らせ。タイミングを見極めろ。シャインの馬力を利用した、特大のカウンターをお見舞いしてやるんだよ。

「ハイビーム」

「しまっ!」

 突き出された一角から放たれる閃光に目を眩まされる。

 見極める事に集中していたのを利用された。近付いてくる足音が、慌てふためく猶予(ゆうよ)さえも奪っていく。とっさに大剣の腹を突き出して防御する。

「突き破る。一角!」

「がぁぁぁぁぁあっ!」

 左肩が焼けるほどの熱を帯びる。目がバカになって見えない分。熱だけが強烈に広く感じられる。

 どうなってる? どれほど酷いダメージを負った? 左腕は無事なのかい?

「サヨナラだクミン。最後はミーの(たくま)しく()()つユニコーンホーンで深く貫いてあげよう」

 どこまでも優しくふざけた声音で囁かれた瞬間、左肩を軸に吹き飛ばされる。

「あぁぁぁぁぁあっ!」

 視界を奪われたまま、上下もわからぬ浮遊感に支配される。より酷くなった肩の熱だけが存在感を示していて、それ以外はわからない。

 ワシは今どこにいる。わからない。わからないけどただ、右手に握っている大剣だけが闘志(とうし)を残している。

「さぁ、ミーの元まで落ちてきたまえ。クミンの全てを抱き止め、楽園まで案内しよう」

 優しいねえ。声で自らの居場所どころか、セリフでワシの居場所まで知らせてくれるだなんて。

 高さは知らないけど、ワシはシャインの真上だね。

 臓腑(ぞうふ)()がれるような浮遊感に、最後のチャンスを予感した。

 回復してきたボヤけた視界に、人馬のシルエットを捉える。

「素直に抱かれてやれるほど、ワシはしおらしくないんだよ!」

(あらが)ってみたまえ。あがきすらもミーは抱き止めてみせよう。一角!」

「はぁぁぁぁぁあっ!」

 突き伸ばされた一角へ、全力で大剣を叩きつける。

 キーンっと、甲高(かんだか)い音を鳴らしながら、根元からユニコーンホーンをへし折った。

 床に大剣を叩きつけながら着地をし、迷いが生じる。

 どっちだ。どっちに跳べばシャインとの距離を取れる。

 時間は逡巡(しゅんじゅん)(とが)め、大きな手に頭を掴まれてしまう。

 終わった。迷うぐらいならデタラメにでも跳ぶべきだったよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ