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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第8章 色欲のシャイン
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525 嫌悪する光

 ちっ。(もだ)え苦しんではいるけど倒せそうな気配はないね。やっぱりパッと考えつくような急所は弱点になりえないかい。

 試しにシャインの心臓を斬り裂き、股間も叩き潰してみたんだけ効果はいまひとつさ。

「いくらクミンとはいえ、少々度が過ぎるな。押し倒してから痛い目をみてもらおう」

 シャインは痛みに表情を歪ませながらも、四足の馬脚で高く跳んで踏み潰そうとしてきた。

「逃げろクミン」

 ワイズが血相(けっそう)を抱えて叫ぶ。

 確かに驚異的(きょういてき)さ。軽く見積(みつ)もって五百キロ弱はある体重で、全力で踏みつけてくるんだ。けど確信があるんだよ。

「どうせワシには効かないんだろっ!」

 大剣の腹をシャインに向けて、真っ向から防御の態勢を取る。

 両手で支えている大剣に重い衝撃がのしかかり、足下の床がひび割れて沈む。けど抑え切れている。

「はぁぁぁぁあっ!」

 裂帛(れっぱく)の一声で押し返すと、シャインが宙に舞ったよ。

「何っ!」

 何っ、じゃないよ。デタラメな弱さじゃないかい。コレまで戦ってきたタカハシ家の中で一番の弱さだよ。

 ただでさえ凶悪な体重が勢いを乗せて降ってきてるってのに、簡単に押し返せるほど軽いなんてあり得ないね。

 ワシが男だったら、呆気なく潰されてたんだろ。ソル・トゥーレでアクアから聞いたとおりの実力じゃないかい。色んな意味でイヤになるよ。

 シャインの着地地点へ駆け、鳩尾(みぞおち)に柄頭をめり込ませる。

「おごはっ!」

 ()った。手応えあり。

 そう、手応えがあるからタチが悪いんだ。どの攻撃も手応えがあるのに倒れない。

 隙を見せぬよう後方へ()退()いて距離をとり、剣先をシャインへと向ける。

「ひっ、酷いじゃないか。ミーの胸に飛び込んでくるなら、両腕を広げて身体でぶつかってきたまえよ」

 口の端から血を()らしながらも、笑みを浮かべるシャイン。最初に斬った胸の傷も、股間を裂いた傷も、いつの間にやら塞がっている。

「女の子を抱きたいならバケモノやめてからにしな。ソレと節操(せっそう)ないのはいただけないよ」

 大剣を振り上げたまま猛接近し、シャインの抱き締めをジャンプで躱しながら着地(ぎわ)に白い尻尾を斬り落とす。

 動いてる。尻尾もハズレだね。どこが弱点なんだい。

「節操がないのは仕方がないだろう。レディは皆、魅力的なのだから。一人に絞るなんてとてもとても」

 シャインが身体を捻りながらアッパーの軌道で掴みかかってきた。

 しまった。首を掴まれっ。

 宙吊りにされるビジョンが浮かび上がる。肝を冷やしていたら、あろう事か胸を掴んできたよ。

「……はっ?」

「やわらかく魅力的、かつ引き締まった胸筋(きょうきん)だ。さぞかしストイックな鍛錬(たんれん)をしてきた事だろう」

 顔を近寄せながら至近距離で見つめ合って囁くシャイン。頭の中が怒りやら羞恥(しゅうち)やらで真っ白になりながらも、反射で白い馬足を斬り裂いた。

 こっちは本気で命の()りとりしてるってのにねえ。強者の余裕を噛まされているみたいで腹が立つ。

 本能的に離れたかったので跳び退いて観察をする。やっぱり足の傷も消えてる。

「レディは男と違って総合的に勤勉なのだよ。逆を()くと男は(なま)けやすく、どこか無責任だ。仕事にしても、休む時も、遊びでさえもね」

「いくら何でも女を神格化(しんかくか)しすぎじゃないかい。男だろうが女だろうがマジメなヤツはマジメだし、だらしないヤツはだらしないさ」

 何も考えずに斬ったけど、そういえば馬って足が敏感じゃなかったかい。

「そして男はレディを見下しやすい。本能的に下だと見やすいのだ。(あさ)ましくて仕方がないよ。総合的に見て支えられているのは男の方だっていうのにね。立てられて増長し、(かえり)みない。(おろ)かな生き物なのだよ!」

 ああ、そうかい。シャインはとことん、全ての男が嫌いなんだね。いいさ、ワシが終止符を打ってやろうじゃないか。

 ワシは次の一点に狙いを定めて、大剣を構えたよ。

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