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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第8章 色欲のシャイン
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511 くだらない美学

「ここにいる女達の大半は、男共から強制的に従わされるだけの人生を過ごしてたんだよ」

 ハスナは愛の巣で意気揚々と活動している女達を見渡す。

「自由を奪われ、やりたくもない下働きをさせられ、拒否権なく男の身体を迎えなければならない。次代の子を作る為ならまだ納得できなくないだろうけど、溜まったストレスの捌け口として抱き捨てられるのが日常茶飯事だったのさ。酷いヤツは抱き回されたりもしただろうよ」

「なんだいそれは。かなり黒いじゃないかい。人間の所業とはとても思えないね」

 聞いただけで胸くそが悪くなるよ。デザート・ヴェーの人権はどうなってるんだい。

「だからさ、あのバカに(さら)われたのは女達にとって皮肉にも幸運だったんだよ。環境はいいし、やりたい事をやらせてもらえる。気分転換に外に出る事だって許されてるときた」

 だんだんと魔王シャインがわからなくなってきたよ。女性への執着故に手元に置いているというのに、自由にさせすぎじゃないかい。支配が目的だろう。

「家族、特に子供と引き裂かれたのはツラかったろうけども、それ以上の価値が愛の巣にはあるんだよ。諦めていた自由があるからね」

「諦めていた自由ねえ。酷いフレーズじゃないかい」

 自由を諦めなければいけない日常があったって意味なんだからね。

「まぁ最初から活動的だったわけじゃないけどね。あのバカが少しずつゆっくりとやりたい事を問いかけては、一人ずつ励まして今に至るからね」

「なかなか感動的な話じゃないかい。とはいえ、ただ女を抱きたかっただけにも聞こえるのが(とく)の悪さかねえ」

 励ましつつも間違った口説き文句をたくさん添えてる姿が想像出来てしかたないよ。

「ホント。がっついてなければ引く手数多(あまた)だったろうにな。あのバカが女に受け入れられたところなんか一回も見た事ないよ」

 笑い飛ばすハスナを見てガッカリした気持ちにさせられたよ。やっぱり女か。

「しかしまどろっこしいバカだね。手っ取り早く襲っちまえば欲求も満たせるだろうに」

 まっ、そうだったらとことん見果て下げたヤローになってるだろうけども。

「そこはあのバカの好みだろうよ。アイツはイキイキと輝いている女達を眺めるのが好きだからね。くだらない美学ってやつだろう」

「違いないね」

 同意を示すと、ハスナと笑い合ったよ。けどくだらない美学に女達が救われている。

「あのバカも余計な言葉がなければ引っ叩かれずに女を寝床へ連れ込めてるだろうに。信じれないかもしれないけどアイツ意外と慕われてんだよ」

「なんとなくは理解できるさ」

 軽く地獄と言い表せる環境から救われてるんだ。多少おつむが下半身でも感謝は出来るだろう。

「っで、ハスナはどうなんだい? 大半の女達とは違うんだろ」

 なんせ盗賊のカシラをやっていた身だ。環境が違うくらい想像がつく。

「先に貧富の差が酷いって言ったろ。アタシは小さな町の出身だったんだけど、子供の頃に大きな街の連中に両親を奪われたんだよ。働き手の招集(しょうしゅう)とかいう理不尽な強制にね」

 ハスナの語り出しに、デザート・ヴェーの業の深さの片鱗(へんりん)を感じ取ったよ。

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