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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第8章 色欲のシャイン
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509 お目付役の少女

「んっ……ここは、どこだい?」

 目を覚ますと砂色の天井が視界に映ったよ。

 (かぶ)さっていた布団をどかして身体を起こそうとすると、ついた手がマットに沈み込んだね。かなりフカフカなベッドじゃないかい。

贅沢(ぜいたく)な環境だねえ。しかしおかしい、高級宿に泊まった記憶なんてこれっぽっちもないんだけど」

 なんでワシはここにいる。眠る前は何があった。

 額に手を当てて考え込む。なかなか記憶が(むす)びつかない。

「気がついたようだね。ドワーフの戦士ちゃん。気分はどうだい」

 強気な声色の方に目を向けると、15~6歳ほどの少女が丸椅子に座っていたよ。片足を自身の膝に乗せ、その足に(ひじ)をついてアゴに手を乗せている。

 ボサボサの赤髪が無造作に肩まで伸びていて、赤茶色のつり目から気の強さを感じさせてくれるよ。

 肌は健康的に焼けた褐色(かっしょく)で、グラマーな体型をしているね。服装もセクシーな赤い服に白くてピッチリのズボン。()き物は白いサンダルかい。踊りが()えそうじゃないか。

 そして、手の届く範囲にはシミターが置いてある、と。

夢見心地(ゆめみごこち)さ。現実感がまるでないね。ここはどこでアンタは誰なんだい?」

「あたいはハスナ。元盗賊のカシラさ。今はアンタのお目付役(めつけやく)だよ。クミンちゃん」

 なるほど。野蛮な髪型をしてるわけだね。元っていうのが引っかかるけども。

「随分と教育の行き届いてない呼び方をしてくれるじゃいかい。ハスナちゃん」

 お前の方がワシより下だと()を込めてちゃん付けを返すと、ハスナは驚いてから吹き出した。

「くくっ。いいねその負けん気、さすがは勇者の戦士だ。気に入ったよ。後で酒でも飲もうや」

「そいつはいいね」

 愉快そうに笑ってくれるよ。ただ嫌いじゃない。気が合いそうだよ。立場さえ敵対していなければ、ね。

「それからここは、とある大馬鹿の根城、愛の巣さ」

 愛の巣という単語を聞いた瞬間、頭痛がフラッシュバックしてきたよ。おかしいね、頭痛ってフラッシュバックするもんだったけか。まぁとにかく思い出したよ。

「隙を突かれてシャインに負けたんだったよ。って事は連れ去られたわけかい。どおりで見知らぬ場所だよ……んっ?」

 上品さを保った豪華な部屋を眺めていると、違和感に気付いて自身の姿を見下ろした。

「なんだいこの格好は。随分と女に幻想を(いだ)きすぎじゃないかい」

 ワシが身につけていたのは、()っすいピンクのやたらヒラヒラした服。いやもう服と言うよりは布だね。ちょっとズレ落ちたら見えるトコが見えちまう。はっ、まさか。

「シャインがワシの服をヒン()いてコレを着せたのかい」

 想像するだけで心が(おぞ)ましい物で潰されそうになるよ。

「あぁ、そこは安心していいよ。確かに用意したのはシャインのバカだが、着替えさせたのはあたいだからね」

 あっけらかんと言う姿にウソが混じっている気配はないね。少し安心したよ。

「落ち着かないから元の服を返してくれないかい」

「あのバカは当分返す気ないだろうね。代わりに、ソレは自由に持ち歩いて構わないとよ」

「ソレ?」

 視線に誘導された方向を見た瞬間、訳がわかんなくなる。

「どうしてコレをワシの自由にさせるんだい。舐めるのも大概にしろってんだ」

 悪態をついた視線の先には、ワシの愛剣が置いてあったよ。

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