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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第8章 色欲のシャイン
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505 忠告の駄馬

「クミン!」

 あんニャロー。一体どこから沸いて出てきやがった。

 ボディに拳をもらったクミンはクタりと脱力している。

「おっと、レディに砂をつけるわけにはいかないな」

 シャインが丁重にクミンを肩に担ぎ上げ、ついでとばかりに大剣も拾う。

「アクアに吹き飛ばされてからすぐに駆けつけたのだがね、まさかのお取り込み中で驚いたよ。けど賊に気を利かせるつもりもないので割り込ませていただいた」

「女ぁ、女を寄越せぇ!」

 余裕を見せるシャインを隙だらけとみたのか、賊が後ろから襲いかかる。

「邪魔だ。お前らにレディは似合わない」

 目にもとまらぬスピードで大剣を振り回し、賊を力業(ちからわざ)で潰して吹き飛ばすシャイン。

「不快だね。(きたな)らしい血でクミンの大剣が汚れてしまったではないか」

「クミンをおいてって貰うよシャイン」

 賊に気をとられている隙を突き、アクアが飛び込む。容赦なく突き出されるトライデントを、シャインが跳び退()いて(かわ)す。

「おっと。嫉妬(しっと)しないでくれたまえアクア。一緒に愛の巣へ連れていきたい気持ちもあるが、三人同時は荷が重そうでね。先行してクミンだけを連れていかせて貰うよ」

「ざけんな、待ちやがれ!」

 叫びに合わせて魔法をぶっ放せれたらどれほどよかったか。オレの魔法じゃクミンを巻き込んじまう。

「任せてワイズ。クミンは渡さない」

 エリスが矢を放つものの、危なげなく回避をするシャイン。わかっちゃいたが遠距離じゃ不利だ。人質を奪い返すなら接近戦を仕掛けなきゃいけねぇ。ってのによぉ。

 ジャスが放心しちまっててまともに動いてねぇ。今クミンを連れてかれるわけにはいかねぇんだよ。

「クリエイトアイス!」

 とっさに(おり)(かたど)った氷を造って、クミン諸共シャインを閉じ込める。

 この砂漠で氷属性がどれほど不利に働くかはわかんねぇ。少しでも足止めが効いてくれ。

「ほぉ、ヤローのクセしてクミンと二人きりの空間を造ってくれてるとはね。なかなか雰囲気作りが上手ではないか。がタイミングがよろしくないな。ふんっ!」

 シャインがしたり顔で語ると、無造作に大剣を振り回して氷の檻を粉微塵(こなみじん)に吹き飛ばす。

 クソっ、止まらねぇ。

「ではそろそろお(いとま)しようか。別れの忠告をしておこうアクア。この砂漠にレディは危険だ。どこにいても用心しておきたまえ。ではさらばだ。はーっはっはっは!」

 高笑いしながら背を向けて去って行くシャイン。馬の身体だけあって恐ろしい撤退速度だ。

「待ちなさいよっ。コラーっ!」

 エリスが矢を放つも、悪あがきが届くはずもなく逃げられてしまう。

「クミン? 何が、何が起こった?」

 賊の無力化はできたってのに、まんまとクミンを連れ去られちまった。タイミングの悪さと展開の早さのせいで、ジャスの理解が追いついてねぇのも(いて)ぇ。

「腹立つわね。最後までふざけた事言ってくれて。何が砂漠にレディは危険よ。誰だって砂漠は危険じゃないの」

 弓をしまいながらエリスがグチると、オレの隣に降りてきたぜ。アクアも馬車まで戻ってくる。

「どうなんだろ。シャインの言ってる事って基本トンチンカンなんだけど、なんか含みがありそうなんだよね」

「気のせいよ、気のせい。行きたくないけど愛の巣まで急ぐ理由が出来ちゃったわね」

「ンだな。悪ぃけど二人とも馬頼めるか。ジャス休ませてやらねぇと町まで辿り着けねぇぞ」

 オレは仕方ないという嘆息を背中に受けながら、砂漠に立ち尽くすジャスを迎えにいったぜ。

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