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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第8章 色欲のシャイン
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504 バカ再び

 アクアのヤツ、()りやがったね。

 下卑(げび)た賊を大剣で無力化しながら、砂漠に舞う流水と鮮血を眺める。アクアが容赦なくトライデントを振るう度に、賊に深々と致命傷が刻まれ倒れた。

「やめろアクア! 相手は人間だぞ」

「それがどうしたの。敵って事には変わりないでしょ」

 激高(げきこう)するジャスに対して、どこまでも平然とした態度でアクアは賊を斬る。

「ふざけんな! 第一なぜアクアが戦っている。お前が戦うのはタカハシ家と対峙した時だけだったはずだ!」

「基本的にはね。けど私が直接襲われたとなったら話は別だよ」

「馬車の中に隠れてれば狙われなかっただろうが!」

「時間の問題だったと思うけどな。それに何もしないで命をあげられるほど、コイツらに心を許してないもん」

 ワシらの防御は突破されていた。だからアクアの言っている事はもっともだ。けど人殺しを許すにはジャスが潔癖(けっぺき)すぎるんだよ。

「だとしても無力化するだけで充分なはずだ。むやみに殺す必要はない。話し合えば改心だってしてくれるかもしれないじゃないか」

「さすがにちょっと考えが甘すぎないかな。下手に手心を加えた結果、身内が死んじゃったら元も子もないよ。命の優先順位ってあると思うし」

「誰の命も平等に決まってるだろ! 上も下もない!」

 キッパリと断言するジャスへ、納得いかないようにアクアが(うな)る。

「私が賊を殺さなかった結果、賊がロンギングの兵達を殺すかもしれないって話なんだけどね。正直私、少しは情が移ってるんだよね。ジャスの為についてきてくれた兵と、襲ってくる賊の命はホントにイコールしてるの?」

 純粋な疑問をぶつけられて言葉に詰まるジャス。

「死ねぇ! へぶっ」

 ジャスの後ろから斬り掛かってきた賊に、ワイズが風魔法を放った。

(ほう)けてんじゃねぇぞ。話は賊共を片付けてからだジャス。おいジャス!」

 マズいね。ワイズの声が耳に届いてないじゃないかい。世話が焼けるよ。

 呆然と立ち尽くすジャスの手助けに向かいたいところだけど、コイツら数が多くて()になるよ。棒立ちのジャスにまた賊がっ。

 シミターが振り下ろされる瞬間、賊の胸に矢が突き刺さり倒れる。

「あっ、え? エリスっ!」

 矢を受けて息絶えた賊を(しばら)く見下ろしていたジャスだったけど、誰が何をしたかに気付いて馬車の上を見上げた。

 エリスはマントをはためかせながら、矢を放っては賊を射殺していく。

「止めるんだエリス。殺しちゃダメだ!」

「エリスも思い切るね。けど大丈夫? 同族どうしの殺しって結構メンタル来るみたいだけど」

 行動そのものを止めるジャスと、エリスの心を気遣うアクア。

「アクアにばかり重荷を背負わせるわけにはいかないじゃない。それに、襲ってくるなら魔物も人間も一緒よ。不殺なんて生半可(なまはんか)な覚悟じゃこの戦いについていけないわ」

 毅然(きぜん)とした態度で言い放つエリスに対し、ジャスが顔色を悪くする。

 あぁもぉ。エリスの覚悟が決まったのはいいよ。立派な冒険者に育ったさ。けどチームワークがボロボロじゃないかい。

 ワイズに視線を向けると、引き()った顔が返ってきた。

 そうさ、ワシもワイズも知ってんだ。ジャスが人を殺す事を極端に嫌っている事ぐらい。長い付き合いだからね、リーダーのポリシーはチームで尊重(そんちょう)すべきところなんだよ。

 チっ。早く仲を取り持たないと崩壊しかねないじゃないかい。

 とにかく早々に賊を片付けて、落ち着かないと。

 (あせ)りつつもワシの受け持つ賊を無力化する。

 よし、後はジャスのところへ行って。

「また会ったねクミン」

 大きなシルエットが、耳障(みみざわ)りな声と一緒に背中から覆い被さってきた。

「なっ、ガハっ!」

 振り向きながらシャインの存在を確認しようとした瞬間、ボディに鈍い一撃を受けちまった。息がっ、意識が……。

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