503 野蛮な砂漠
シャインの襲撃を警戒しつつ砂漠を進む。
ただでさえ踏破が厳しいというのに、余計に神経をすり減らされてしまう。
「砂漠っつぅのは暑ぃしダレるし、喉が渇くしでやんなっちまうよなぁジャス。気付いてっか」
「わかっているさ。殺気が露骨すぎる。囲まれているね」
左右に視線を動かしながら馬車を止める。
「嫌な感じだね。危機感はないんだけどこう、ゲスい雰囲気を感じるよ」
クミンが嫌悪感を示した事に疑問を覚える。そこまで酷い気配は感じないのだけれども。
ボクは馬車から飛び降りると、声を張り上げた。
「何者かは知らないが出てきたらどうだっ !ボクたちはもう気付いているぞっ!」
ゾロゾロと現れるターバンを巻いた厳つい男達。皆がシミターを手に持ち、ゲヒた笑みを浮かべている。
やはり賊か。出来る事なら人間は相手にしたくなかったんだけどね。
「ひひっ。バレちまってたんならしょうがねぇ。金目の物と食料、それから命も貰ってくぜ」
「おいおいよく見ろ。女もいるぜ、女ぁ!」
「久しぶりの女だ。生け捕りにして引ん剥いて、ギヒヒっ。運がいいぜオレらぁ」
なんだ。ボクらに対する殺意以上に、クミンに対する執着が酷い。
「けっ、聞いててヘドが出るぜ。蹴散らすぞジャス」
「殺さずに無力化させるんだ。いくぞ」
ボクの合図で賊との衝突が始まる。ワイズが下級魔法で足止めしている間に、ボクとクミンで無力化を図る。
「なんだコイツら。強ぇ」
「調子に乗ってんじゃ……うぐっ」
武器を吹き飛ばしては打撃を入れて賊共を無力化していく。
「女のくせに生意気だっ。攫っちまえ!」
「やになるね。弱いくせに欲望だけはいっちょまえってところが特に」
特に熱烈にヘイトを買ってしまっているクミンが、機嫌の悪さをむき出しにして大剣を振り回す。
「馬車だ。まず馬車を狙え」
次々に賊を無力化していくものの、三人で馬車を守るには人手が足りなかった。
マズい。馬車の中には疲れ切ったロンギングの精鋭達が休んでいる。今の彼らでは賊の相手はキツい。
焦りを覚えていると、砂漠に流水が舞いだした。
賊の中央にアクアが降り立つと、トライデントを振り回して吹き飛ばしていく。
「女だっ! 女が出てきたぞ」
沸き立つ賊に対して、アクアは笑顔で決断した。
「うん。これは殺した方が早いね」
「ばっ、待てアクア!」
制止の叫びは、アクアの心に響かなかった。




