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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第8章 色欲のシャイン
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500 力業で作り上げられたハーレム広場

 遮蔽物(しゃへいぶつ)もなく照りつける太陽。一歩進めばクッキリと足跡がつくほどキメ細やかな砂。けれども軽く砂塵(さじん)が吹き付けるだけで歩いた証は形を失い平坦へ戻る。

 久しぶりになるけど、この暑さには参っちゃうね。ジリジリと出てくる汗が止まらないや。

 デザート・ヴェーに着くなりウチは、本来の姿のシャインに腰掛けて砂漠を進んでいた。

 どこもかしこも似たような景色ばっか。シャインは躊躇(ためら)いなく進んでるけど、本当に道があっているのか、また逸れていないのか心配になってくるよ。

「見えてきたな。アレがミーの根城、愛の巣だ」

 ねぇ、その名前止めないかな。ゲンナリしながら正面を眺めると、頑丈そうな岩で出来た宮殿(きゅうでん)がユラリと姿を現した。

 まだ距離があるからか陽炎(かげろう)のように輪郭が朧気(おぼろげ)になってる。

「またどっしりと地に足をつけたような魔王城だね」

「大空への塔のように高くはないが、快適にレディ達が暮らせるよう広く造ってある」

「うん、趣味全開だね」

 結構近付いたんだと思うけど、未だに愛の巣の輪郭がぼやけてるや。あ違う。ウチが遠い目をして

焦点(しょうてん)合わせてないだけか。

 シャインは十段ほどある入り口の階段を登り、愛の巣の扉を開いた。

 瞬間に軽快な音楽が(かな)でられ、広間の左右から色とりどりの衣装を身に(まと)った褐色(かっしょく)の女性達がダンスをしながら現れた。

 ……はい?

 小刻みに動きながらキレッキレのダンスを一糸乱れぬ統率力で続けている。みんな自信を持った笑顔をしていて、()せつけるように腰を動かしポーズを決める。

 シャインはというと、うんうんと頷いていた。後ろからでも満足げな笑みを浮かべているのが想像出来る。

 左右と正面の奥には様々な楽器で奏でている音楽隊の女性達。三箇所に分かれているのにブレがないあたり、相当練習したんだろうな。

 あ、よく見ると端の方に小さな女の子達も踊ってる。ちぐはぐながら一生懸命音楽に合わせようとしている姿は微笑ましい。

 ダンスは五分近くにわたり、踊りきった際には妙な熱気がこの広間に包まれていた。

 やりきった。誰の胸の中もこの一言で満たされている。

 パチパチパチとシャインが一人拍手をする。

「素晴らしいよレディ達。よくここまで仕上げたものだ。美しかった」

 シャインの感想に感謝の言葉がどの女性からも返ってくる。怯えや恐怖といった感情はないように感じられる。

 凄く意外。シャインってば女性達から(した)われてるよ。

「これからも自身を高めてくれたまえ。君たち一人一人がかけがえのない(とうと)(たましい)なのだよレディ達。胸を張って笑顔でいるといい」

「はいっ!」

「それとミーの寵愛(ちょうあい)を受けたくなったらいつでも自室に来るといい。誰であろうと愛を受け止めて……」

 ()れ言を抜かし出したあたりで女性達は早々に、各自の場所へと退散していった。

 シャインってばひょっとかして、余計な事を言わなきゃ童貞(どうてい)捨てれてたんじゃないかな。

「やれやれ、みんなシャイでかわいらしいではないか。けどもっと心を裸にしてミーの胸に飛び込んできてもいいと思うのだがね」

 しょうがないみたいに溜め息吐いてるけど、しょうもない事言ってんのシャインだかんね。

 不意に小さな女の子がテトテトとシャインの(そば)まで駆け寄ってきた。

 シャイン様と両手を伸ばしては、笑いながら抱き上げられる。

「シャイン様。あたちのダンスかあいかった?」

「あぁ、かわいかったさ」

「わたしはわたしは、セクシーだった」

「もう悩殺(のうさつ)だよ。クラクラするね」

「キャー。じゃあシャイン様のお部屋で愛を受け止めてもいい?」

「それはもうちょっと大きくなって、愛の意味を知ってからだな。成長を待っているよ」

 あ、小さい子に対する分別はちゃんと出来てるんだ。

 シャインはブーたれる女の子を(なだ)めると、自室へとウチを招き入れた。

「色々と聞きたいんだけどさ、あの女性達は?」

「デザート・ヴェーにある各町々から(さら)ってきたレディ達さ。帰れない事以外は自由にのびのびと暮らしてもらっている」

「さっきのもてなしは?」

「何か趣味を持ってもらおうとインド映画の映像を見せたのがきっかけだね。言葉はわからなくともダンスの情熱さは身に染みたようだ。すっかり趣味の一環になっていたよ」

 どこかで見た事あると思ったら、インド映画だったか。それで楽器鳴らせるようになたって凄くない。

「みな才能を秘めたレディたちだよ。だからもったいなく感じていたさ。デザート・ヴェーは徹底した男尊女卑(だんそんじょひ)の社会だからね。男を立てる事以外許されないバカバカしい風習など壊さなくてはならないだろう」

「へぇ。ちょっと視線がトンチンカンだけど、シャインなりに考えてる事もあるんだね」

 これは見直してあげた方がいいのかもしれないね。

「さぁ、後は勇者一行のレディ達を待つだけだ。そうそう、戦いの際にはエアにヤロー共の相手をしてもらうよ。その(あいだ)にミーがクミン、エリス、アクアの相手をするからね」

 あダメだこのバカ。下半身に忠実すぎてもう救えない。

「まぁ、従うけどさ。今回のメインはシャインだから」

「任せたよ、エア」

 自信に溢れる笑顔が、どうしよもなくて仕方がないや。

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