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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第8章 色欲のシャイン
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494 親の願い子の想い

「なんと(なげ)かわしい事に。その手では食事をするのも一苦労ではないか。仕方がない。ミーが手ずからうどんをフーフーして食べさせてあげようではないか」

 なんかシャインがバカ(づら)()げてウチに近づいてくるんだけど。誰か止めてよ、ねえ。まさかここに来て一番握力を失った事を悔やむ事になるなんて。

 フォーレがやれやれと言った感じに溜め息を()くと、白衣のポケットから布と瓶を取り出した。布に液体を染みこませるとシャインの後ろに回り込み、布で口を塞ぐ。

「うっ! ぅぅ……」

 口を塞がれたシャインが一瞬で気を失い、床へ寝転がった。

「凄い効き目だねフォーレ。クロロホルムってやつ?」

「違うよぉ、猛毒ぅ」

「おまっ、食事の場で使用していい道具じゃないだろ」

 グラスが若干ひきながらつっこんだけど、フォーレは何食わぬ顔で食事を再開した。まぁ、シャインの事だから暫くしたら復活するでしょ。

 にしてもフーフーして食べさせてもらうか。まるで雛鳥(ひなどり)だね。父ちゃんにだったらやってもらいたいかも。けどそれは後だね。

「正直シャインにも聞いててほしい話だったけど、こうなっちゃったらしょうがないや。父ちゃん、ウチね……」

 この戦い、降りてもいいかな。そう続けたいはずの言葉が詰まって、視線を下げてしまう。

「続けてぇんだろ」

「えっ?」

 視線を上げると、ムリして作った父ちゃんのしたり顔と目が合った。

「俺はな、エアが無邪気に飛び回る姿が好きなんだ。人生楽しんでるなって伝わってくるからよぉ。だから見せてくれよ、俺に、エアの自由な空を」

 半分ムリしてる。足の方からカタカタ聞こえるし、やせ我慢の度合いが半端じゃない。けど、もう半分は本当に望んでくれてる。父ちゃん自身が、ウチの自由を望んでる。

「まっ、ホントに戦うのが嫌になったってんなら、俺が守ってやる。一度命賭けたんだ。みんなだってなわかってくれるさ。けど、(くすぶ)ってんだろ」

 ズルいよ父ちゃん。最後にチャーミングなウインク投げてくるなんて。おかげで心に作った鳥かごから飛び出しちゃったじゃん。

「ウチ、飛びたい。まだ飛んでいたい。だからもう一度出かけるね。父ちゃんには寂しい思いさせちゃうけど、目一杯飛んでくる」

「俺が寂しいとかいっちょ前な心配すんじゃねぇよ。子供は巣立ってなんぼだからな」

 ホントはずっと囲ってたいクセに。ムリしちゃうんだから。だから大好きだよ。

「よしっ、がんばらなくっちゃ。シャインに貸しもあるしね」

「エアってばわがままで往生際が悪ーい。どうせ再戦するなら今度こそ死んじゃってよー」

 せっかく気合い入れたのにヴァリーってば。デッドが死んでから何かを(こじ)らせちゃってるんだよね。

「あははっ。それよりグラス、手を使わない武器ってなんか思いつく?」

 ブレイブ・ブレイドの衝撃でウチは武器を失っちゃってるからね。戦力の足しになる何かが欲しい。

「パッとは思いつかないな。武器とはどうしても手で持たねばならん」

「んー、アイススケートなんかはどうだ。アレなら手を使わないだろ。レイス○ンとかさ」

 グラスが真面目な顔で首を横に振ると、父ちゃんが提案してきた。

「アイススケートね。うん、ダメ。パッとしない。第一氷属性じゃないと有効活用出来なさそうなんだよね。どうしても地形に足を引っ張られちゃうから」

 ホント、手さえ無事だったら(おの)やハンマーと言った豪快(ごうかい)なパワー武器をブン回してるところなんだけどね。

「風を有効活用してぇ、エアでも持てる武器かぁ。やっぱりカードかなぁ、トランプなんて丁度いいかもぉ」

 フォーレが口元に人差し指を当てながらニマリと微笑む。

「カード、カードね13×4+ジョーカーで、弾数53か」

「弾数が少ないならぁ、雀牌(ジャンパイ)でもいいかもぉ」

「いや持ち運びが不便すぎるからね」

立直(リーチ)とか言いながらぁ、額に点棒(てんぼう)を突き刺すとかおもしろそぉなのにぃ」

 それ立直(リーチ)がトドメになってるから。おもしろいかもしれないけど、風の有効活用なんてできそうにないからね。

「仕方ない。無難でおもしろくないけど、雀牌よりかはカードの方が戦えそうだからカードにするよ」

 暫くは特訓しないとだね。アクア達がデザート・ヴェーに着くまでに物にしなくっちゃ。

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