481 魂の雑談
「まさかシャインどころかエアすら生き残るとはなぁ。つくづく予想外なアマだ」
僕はどこまでも果てしなく広がる白い空間で、現実に起こっている事を眺めながら毒づく。
「エアの悪運が強かったのか、はたまたシャインの悪運が強かったのか。判断の難しいところですね」
隣で一緒に眺めていたシェイが顔を顰める。
「悪運の強さで言えばアクアもそうだろぉが。アレ食らってよく死ななかったな」
「アクアの足掻きが功を奏したのでしょう。せっかく勇者側についたのです。生き抜いてもらわねば困りますよ」
けっ、誇らしげに微笑みやがってよぉ。
「僕的にはアクアにはさっさとくたばってもらって、早くこっち側に来てもらいたいとこだがな。テメェと二人きりでいなくてよくなるからよぉ」
事あるごとにエグい精神攻撃をハートに突き刺してくるから堪んねぇんだよ。一人で居た時の方がまだ静かでよかったぜ。
「おや、デッドは自分ではなくアクアの方が好みでしたか。知りませんでした」
「誰がンなこと言った。誰がっ。アクアが居ればシェイのお喋り相手は僕じゃなくなるから楽できるだけだっての」
嫌みを込めて吐き捨てると、シェイは腕を組んで目を閉じたぜ。
「……そうですね。確かにアクアと二人でデッドの事をアレコレ話し合うのは惹かれますね」
「なんで話題が僕になんだよボケがぁ!」
居心地の悪さが悪化すんじゃねぇか。
「まぁ冗談はさておき、二人きりが嫌ならエアでもよかったのでは」
クスクスと笑ってんじゃねぇての。にしてもエアかぁ。
「エアはエアでちょこまかとウザってぇ予感がすんだよなぁ。言うまでもなくシャインより万倍マシなんだが、手放しで歓迎できねぇ」
「意外とデッドはコミュ障なんですね。とはいえシャインに来ないで欲しいという意見は同意ですが。あぁ、勘違いがないよう言っておきますが、シャインに生き残ってほしいという意図も皆無です」
だろぉな。コミュ障呼ばわりにはムカっときたが、指摘すっと余計に遊ばれそうだから押し黙る。
「ってかよぉ、シャインは一体どうやったら死ぬんだ?」
「皆目見当もつきませんよ」
呆れながら呟いたら、溜め息が返ってきたぜ。シェイもシャインには相当困らされてっかんな。
「まさかあの高さから落ちても立ち上がるだなんて、理解の範疇を超えていますよ」
「シャイン相手に理解なんて言葉が通じて堪っか」
もうシャインの話題を取り上げるのはやめよう。何一つ建設的じゃねぇ。
「デッドの考えてる事もわからなくはないですが、流れを読むに次の戦いはシャインですよ」
シャインが話題から遠ざかってくれねぇ事に、頭を抱えるハメになるなんてなぁ。
「なんで死んでからも面倒ごとは押し寄せてくんだよ」
ガチ勘弁してほしぃぜ。
「どう足掻いても暫くは二人きりになるでしょう。気持ちを割り切って仲良く過ごしましょう、デッド」
「……だぁぁぁあ! もぉぉぉぉおっ!」
シェイの微笑みに小悪魔を連想させる日が来るなんて、死ぬまでは思わなかったぜ。
勇者一行とタカハシ家の戦いをシェイと二人で見守っていかなければいけない事に、叫びながら諦めを抱いたぜ。




