480 何度でも再起動するバカ
「やれやれ、酷い目にあった。エアもまさかあんな高さからミーを落とすとは、マイシスターながら恐れ入ったよ」
落下した衝撃で出来たデカいクレーターの中心から、服についた土埃を手で払いながら立ち上がる。荒野に吹きすさぶ強風を受け、道なき道を歩き出す。
大空への塔からは少々離れている。風の力とは恐ろしいな。こんな遠くまで流されてしまうとは。
「にしても信頼とは時に恐ろしい状況を作り出すものなのだな。確かにアクアを制してからすぐに身内を退場させるとなると、ミー以外の選択肢はないわけか」
エアはミーの秘密に気づいているからね。けどだからといって痛みがないわけではないと言う事をわかってほしいものだ。
やれやれと首を左右へ振りながら、目的地に辿り着く。
「さて、ここら辺であろうな。エアの生命を感じる」
周囲に何もない荒野にポツンと立ち止まり、青空を見上げる。
暫く待つと、赤い化粧を施した黄色の塊が勢いよく墜落してきた。
「なんと痛ましい姿か。しかし安心したまえエア。ミーの生なる力をもって、命を繋ぎ止めようではないか」
全身に生命の力を巡らせながら、腕を広げてエアを迎え入れる。
ミーは回復魔法など使えない。が生きるギリギリ保持する手助けぐらいなら出来る!
エアを受け止めた瞬間にズシリと全身に衝撃が走る。
受け止めろ。命を潰さぬよう、細心の注意を払って包み込め。間違っても、一線を越えるな。
両足で重さを感じながら、無事にエアを受け止めきった。控えめな胸が上下に動いている。
「派手にやられたようじゃないか、エア」
「んっ、うぅ……シャイン。ウチ、死んでない?」
ミーの胸の中でエアは、朦朧としながら黄色い瞳で見上げてきた。
「大丈夫、死んでないさ。傷も痛むだろう」
「そうだね、よかった。もしもウチが死んでたら、シャインの事を殺してウチも死んでやってるところだったよ」
それは怖いな。エアならやりかねないところが特にね。まぁミーの矜持に反するからやるつもりもないのだけれども。
「それよりもエア、今回貸した分はミーの戦いで返してもらうよ」
「ウチ、ズタボロなつもりなんだけど。けどシャインに借り作っちゃてるのも確かか。しょうがない、従うよ」
不服そうに眉を顰めながらも、渋々承諾をしてくれた。
そういう素直なところも愛らしくて好感がもてるよ。
「ありがと。だが今はミーの胸の中で存分に休むといい。疲れているだろうからね」
「本気で飛び出したい気持ちはあるけど、そんな元気もないからね。お言葉に甘えさせてもらうよ。おやすみ」
エアは目を閉じると、すぐに寝息を立て始めた。
「おやすみ」
さて、すぐにベッドへ運んで一緒に寝たいところなのだけどね。最後にやる事が残っているから、エアには辛抱してもらわなくてはいけないのが心苦しいよ。




