471 繰り返す殺意
「……アクア?」
アクアがエアに空へと連れ去られて、援護も出来ないまま強制的にシャインの相手をさせられて、暫くしたら連なるように水球が出来上がっては弾けて、アクアが、床に叩きつけられた。
その光景をアタシを含めた勇者パーティとシャインが動きを止めて眺める。
エアがブリッジ態勢でアクアの両手両足を掴んで動けなくしていた。
海のように綺麗で青い瞳から、光が消える。
アクア達に遅れて、エアの羽が混じった黄色い雨がアタシ達に降り注ぐ。
「ははっ。雲の上なのに雨が降っちゃった。アクアってば水出し過ぎだって」
エアが後転しながら立ち上がる頃には黄色い雨は止んでいた。力なく倒れ伏すアクアが無防備に濡れている。両腕なんか、曲がっちゃいけないところで曲がってる。
「今回はウチの勝ちだね、アクア。けどアクアも凄いよ。今のを食らって生き延びてるんだもん。辛うじてだけど」
生き、てる?
「じゃっ、このままトドメにしよっか」
コイツナニイッタ?
エアの容赦ない一言が、集まりだした風が、アタシの何かをキレさせた。無言で弓を引き、矢を三連射する。
「っと、不意打ちなんてなかなか……って!」
エアは攻撃された事を楽しみように、左右にブレた二本の矢の間に入って躱した。が逃げ場を失った所に迫り来る三本目の矢が黄色い瞳を見開かせた。
エアの頭に高速の矢が迫る。
死ね。
「そりゃあ!」
エアは声を上げながら頭を振ると、迫る矢を頭突きで弾き飛ばした。
「ウソだろ」
「いくらなんでもデタラメが過ぎるんじゃないかい」
「あぁ、エアの自慢のおでこはどうしてそうも愛らしいんだい」
ワイズとクミンが驚愕して、バカがバカを言ってる。けどそんな事はどうだっていい。
仕留め損なった。アクアを殺そうとする憎き鳥女を、おとおさんを殺した罪深き鳥女を。
そうだ。あの鳥がおとおさんを殺したんだ。それだけでも許せないのにあの鳥、アクアまで殺そうとしてる。
させない。殺す。生かさない!
「いいねエリス。殺意がもうビンビン。それでこそ戦い甲斐があるよ」
黄色い翼を羽ばたかせ、かぎ爪の足を床から離すエア。
タカハシ家を殺しちゃったらアクアが悲しむ? もうそんなこと言ってられない。殺さなきゃ守れない。
「守りたい人は生きてる内に、よね」
あの癇に障る余裕の笑みを、なんとしてでも射貫いてやる。
嵐のような強大さも、何を仕出かすかわからない自由さも、全部射貫いてやる。
「来なよエリス。殺意がどこまでウチに届くか確かめてあげる」
「いちいち上からものを言うんじゃないわよ!」
怒り任せに冷静に、次々と弓を引いては放った。




