表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第7章 大空のエア
469/738

468 立ち上がる悪夢

 よし、変態馬野郎(シャイン)は倒した。これでアクアを助けにいける。

 ジャス達と一緒に青空を見上げる。アクアの放つ水魔法を避けながら、エアが縦横無尽(じゅうおうむじん)に飛び交う風魔法を放っていた。

 そして空中には複数、流れる風が密集しているスポットが浮いていた。

 エアが散らした黄色い羽がスポットに吸い込まれると、暴れる風の勢いに乗って矢のように発射される。まっすぐに、カーブを描くように、狙いを拡散させながら。

 アクアは四方から襲い来る風と黄色い羽を、水を纏ったトライデントを振り回しながら防御と回避をエアから視線を切らさないように行っていた。

 一見すると五分五分の戦いをしてるように見えるけど、空を飛べるエアの方が(まさ)ってる。

 エアは完全に回避してるけど、アクアは黄色い羽を何度も掠めていた。

 風のスポットから発射される羽がランダムに拡散されているせいで、アクアは攻撃を予測しきれないんだ。

 大丈夫だよアクア。今アタシがエアを攪乱(かくらん)してあげるから。

 速さを重視する為に矢に風を纏わせて、弓を引く。

「みんなしてエアを見つめないでくれたまえよ。嫉妬してしまうじゃないか」

「なぁ!」

 いざエアを射貫こうってタイミングで、あり得ないはずのキモ甘ったるい声。反射的に飛び退()きながら振り返ると、深々と傷を負ったシャインが後ろからクミンの肩に手をかけている。

 ジャスとワイズもアタシと同様に、驚きながら距離をとっている。肩を掴まれたクミンだけが、振り向きながら目を見開いている。

「なんで、生きてんのさ」

 ()ってる。今なお致命傷を。なのになんでシャインは平然としてんのよ。

「クミンの大剣による一撃は凄まじいね。ミーへの愛の深さを感じられたよ」

 うっとりしながら傷を撫でるシャイン。斬られた深さからは致命的な殺意しか感じられない。なのに生きている。

「もちろんエリスの愛も受け止めているよ。凄まじい愛の数に押し倒されそうなぐらいさ」

 そりゃアタシだってしこたま射貫いたわよ。今だって手足に矢が突き刺さったままじゃない。どうなってんのよシャインの身体は。

 欠片も減らない生命力を目の当たりにして、アクアの言葉が蘇ってきた。

 シャインの事、殺せるなら殺しちゃってよ。死ぬビジョン、浮かばないの。

 死なない変態ってふざけたワードが、目の前で具現化しやがった。こんなのどう殺せっていうのよ。

「だが勇者、君が犯した罪は到底許されない」

 (アタシ)達にかけた甘い言葉を急速冷凍させながら、シャインの冷めた目つきがジャスを捉えた。手にはいつの間にかランスが握られている。

「邪魔だから早々に消えろ」

 いうが早いかシャインがランスを投擲(とうてき)する。驚愕(きょうがく)から復帰できないままでいたジャスに、殺意の(かたまり)が高速で迫る。ジャスもアタシ達も、誰も反応できない。

「させない。レー○ートライデント!」

 ただ遠くでエアと戦っていたアクアだけが反応して、手に持っていたトライデントを投げ放った。ジャスに迫るランスを弾き、窮地(きゅうち)を救う。

 助かった。けど、代わりに。

「隙ありだよアクア」

 アクアは丸腰になってしまった。エアが急旋回してアクアへと迫る。

「させないよ。はあぁぁぁぁあ!」

 急いでトライデントを精製し、上段突きを放つ。けれど急いで作った不格好な攻撃は、エアに悠々と避けられてしまう。

「甘いね。下だよ」

「きゃっ、あぁぁぁぁあっ!」

「やぁっと捕まえた。お空の旅にご招待だよ」

 エアは人間形態に戻りながらアクアの足下に滑り込むと、足を掴んで振り回してから上空へと放り投げる。

 再び黄色い翼を広げたエアは、錐揉(きりも)みしていたアクアの両肩を両足のかぎ爪で掴み、更に空高くへと(さら)って行ってしまった。

「アクアーっ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ