466 鉄壁の盾
青空を舞うように飛ぶ黄色い影へ、アクアが水圧の砲を連続して放つ。
「さすがアクアだね。ちょっと見ない間に精度が増したんじゃない。当たってあげないけど」
黄色い羽を散らし旋回しながら躱すエア。空を飛んでいるから遠距離攻撃に頼らざるを得ないのがかゆいところだろう。
「コレならどうかな。ゲリラ槍雨」
エアが水砲を躱した瞬間に、水をトライデントに変化させ至近距離からエアを襲う。
「危なっ。極端な軌道変化をしてくれるじゃん。けどアクアが軌道をねじ曲げるのって、一回が限界だよね。風ならもっと自由に動くよ」
飛び回りながら風を放つと、回り込み軌道を変えながらアクアへと迫り来る。
「エアってそういうところ器用だよね」
四方から飛んでくる風をアクアは、水を纏ったトライデントを振り回す事で相殺していった。
アクアとエアは遠距離を保ちながら勝負を拮抗させている。
「向こうは花があっていいではないか。ミーも混ざりたい気分だよ」
シャインが悠々と余所見をしている隙を突いて、ボクは剣を振り下ろす。しかし視線を戻さぬままランスで合わされてしまう。
「もっとも、勇者の君さえいなければミーはどこにいたって構わないのだけどね。君がいなくなればミーのハーレムが完成するのだから」
ランスで剣を弾かれ、シールドバッシュで吹き飛ばされる。
「ぐはっ」
重い。言う事は軽くてふざけきっているのに、申し分ない実力を兼ね備えている。
「わけわかんない事を宣んないでよ」
「さっきから虫唾が走って堪らないんだよ」
暗黒とも取れる殺意をむき出しにしながらエリスが雷の矢を放つも、涼しい顔をして盾で弾ききった。電気なんて走ってないとばかりに。続く禍々しい殺意を纏った大剣の薙ぎ払いもガードしてしまう。
「ちぃ、どこまでふざけ抜いてんだい。全力の薙ぎ払いを微動だにせず防ぐなんてさあ」
奥歯をギチギチと噛んで睨み付けるクミン。彼女のパワーを真正面から受け止めるなんて。
「馬力が違うのさ。ミーの強さに惚れてしまうだろう。クミンも素直にミーの愛を受け入れたまえよ」
シャインはあろう事かランスを捨てて、クミンにゆっくりと手を伸ばした。まるでその手を取ってくれる事を疑っていないかのように。
「戦場で武器を落とすんじゃないよ! 気色悪い囁きもやめな!」
盾を押し込んでいた大剣の力を緩め、グルリと逆回転しながらもう一度薙ぎ払う。
「おっと」
力の支えどころを失ったシャインは態勢を崩す。
盾と反対方向、それもランスを捨てた素手の方へ放たれる大剣。それをシャインは、生身の腕でガードして防ぎきった。
「なんだって、あんたバケモンかいっ!」
「言っただろう。馬力が違うとね」
耐久力が生半可じゃない。いったいどんな攻撃なら、魔王シャインにダメージを与えられるんだ。




