表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第7章 大空のエア
462/738

461 本来

「空の勇者さんたち薄情だね。狙われないとわかると全力で走り出すんだもん」

 手で(ひさし)を作りながらのんきに見送るアクア。

「ちょっとアクア。なんで武装を()いてるのよ」

 青筋をヒクヒクさせながら、エリスが襲い来るカラスを射貫いてゆく。

「だって私も狙われてないんだもん。今戦闘に参加する理由がないんだよね」

 精製したはずのトライデントがものの見事になくなっていた。

 まさか、この状況でアクアは戦線離脱するっていうのか。

「エアも大したもんだよね。私を襲ったら魔物が瞬殺されちゃうのがわかってるから、あえて襲わせないようにしたんだね」

「待ってくれアクア。今は一刻を争う事態なんだ。ここは目をつぶって手を貸してくれ」

 時間制限がないのならアクアの矜持(きょうじ)にいくらでも付き合える。けれど今っ、今だけはその矜持(きょうじ)(ひるがえ)してくれ。

「ジャス。本来なら私はここにいないの。ジャス達との戦いでとっくに死んでるの。だからたとえどんなピンチに(おちい)ったって、自分たちだけの力で切り抜けなきゃいけないんだよ。死んだら何も出来ないから」

「本来いないって、今ここにいるじゃないか」

「信頼できる仲間を頼るのは間違いじゃないよ。けど状況に流されてただ甘えるのは違うと思うの。この戦いはね。ジャス自身が強くなれないと意味がないんだから」

 くっ、仲間になったかと思えば呆気(あっけ)なく突き放すじゃないか。

 腹いせとばかりに剣を振るい、カラスの群れを全滅させた。ジャーレフの姿は見えなくなってしまったが、まだ足音は聞こえている。

 まだ急げば追いつけるはずだ。

 (げき)を飛ばしてから再び登り出す。カラスやライチョウの群れに襲われるも、クミンとエリスと三人で駆け抜けながら対処をした。足を止めたら止めただけ、ジャーレフが先を進んでしまうから。

 夕焼け色した内装はやがて星が輝く夜空の色と変わり、襲いかかる魔物もフクロウやトビといった夜行性の鳥に種類を変えていった。

 フクロウの催眠音波に苦戦を強いられ、足を止められては失った時間に焦る。

 焦るほどに、何もしないアクアに苛立ちが募ってゆく。

「こんな状況だっていうのに徹底してるじゃないかいアクア。ワイズが死んでもいいのかい」

「その時はジャス達の実力が足らなかっただけだよ。だってエアは、私が戦闘に参加しないのを踏まえて競争を持ちかけたんだから」

 だから、エアのルールに則ってアクアは手伝わないっていうのか。ワイズを、ジャーレフを、ボクたちを見捨てるっていうのか。

「ほんっと厳しいわねアクアは。っで、この戦いを乗り越えたらアタシ達は強くなれるわけ?」

 エリスの矢で射貫くような鋭い問いかけに、アクアは笑みをこぼして言い放つ。

「もちろん。だから信じさせてよ、エリス達が自分たちの力だけでワイズを救い出せるのをさ」

「だったら、期待に答えなくっちゃね!」

 気持ちが高揚したのかエリスは、力強く応えながら魔物達をより鋭く射貫いていった。

 わからない。どうしてそうまでエリスはアクアを信用できるのか。

 ボクの方はマリーを殺した残虐なアクアが、脳裏にチラついて離れないっていうのに。

 許したはずのアクアを、許せなくなってきている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ