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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第7章 大空のエア
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458 お喋りをしながらお空の散歩を

 あぁ、地上が遠ざかっていきやがる。

「オレはここまでのようだ。ジャス、オレを置いて先に行け。って言おうと思ってたのになぁ」

「セリフ自体は格好いいけど、二日酔いで潰れてるときに使うセリフじゃないと思うな」

 オレを抱えながら飛んでいるエアが容赦ないツッコミを決めてきやがるぜ。ただでさえ登る気が失せるほど高い塔だ。二日酔いだったらなおさら登りたくねぇ。まぁ今回は楽させてもらえるようだけど。

 うわぁ、もうジャス達が見えなくなるほど高いとこまで来ちまってんじゃねぇかよ。溜め息が漏れちまうぜ。

「そんな溜め息つかないの。ここまで高いと風が涼しくて気持ちいいでしょ。景色もいいし」

 確かにこの身体には熱いよりか寒い方がマシかもしんねぇけどよぉ、状況が危険すぎて景色なんて楽しめぇっての。

「頂上までついたらゆっくり休ませてあげるから辛抱してね。お水もあるし、手作りの羽毛布団だって用意してあるんだから」

「その羽毛布団手って黄色かったりすんのか?」

「ウチのお手製だからね。勿論黄色だよ」

「そいつはありがてぇ。いい匂いがしそうだぜ」

 魔王エアの羽で作られてんならとんでもない高級品だろぉ。貴重な体験をさせてもらえるぜ。

「ところでよぉ、お前らはなんで各所を侵略なんてしてんだよ」

 誰にも邪魔されずに魔王と話せるなんて、またとない機会だ。現状オレの安全は確保されてんだろぉから、気兼ねなく聞くとすっか。

「んー、実は目的ってないんだよね」

「おいおい。こんな大それた事をやっておいて、ただなんとなくおもしろそうだったら侵略しましたなんて言わねぇだろぉな」

「今は気まぐれにおもしろそうだからやってるかも。ウチ達の目的なんてマリー殺した時点でほぼ達成しちゃってるから」

 マリーが目的ねぇ。殺して一体何を阻止したかったんだか。

「ちなみに理由を聞いたら答えてくれるか?」

「内緒。って言いたいところだけど、父ちゃんの望みを叶える為って言うのが一番の理由かな。マリーが消えた事によるイッコクへの影響なんて副産物に過ぎないんだよね」

 羽ばたいたら高くへ飛べる事のように、当たり前とばかりにエアは答えたぜ。

 ちっ、結局ナゾが増えただけじゃねぇか。

「もう一個聞くけどよぉ、エアは俺たちとの戦いに勝つつもりあんのか?」

 思い返さなくても歴然(れきぜん)としている事実。タカハシ家との戦いで勝てる勝負なんてひとつもなかった。本気だったらオレ達はとっくに全滅してただろう。

「ないよ。けどただで負けるつもりもない。ウチはせっかく自由に飛べるようになったんだもん。精一杯楽しませてもらうからね」

 背中越しでもわかる。屈託なのい笑顔をしているって事を。どうしてこんな天真爛漫(てんしんらんまん)な少女と殺し合いをしなきゃいけないかねぇ。

「もう好きにしやがれっての。けどよぉ、ジャスが空の勇者と競争して、ジャスが負けるなんて普通ねぇと思うんだが」

「そりゃ普通にかけっこしたら空の勇者さんに勝ち目はないよ。だからハンデを背負ってもらわないとね。ここウチの魔王城だから、細工なんていくらでも出来るんだから」

 ハンデねぇ。ひょっとしてオレ、思ったよりピンチなのかもしんねぇなぁ。

「一方的だったけど()わした約束を違えるつもりはないよ。空の勇者さんが倒れたら、不調なワイズに爪を向けるつもりだからよろしくね」

「声を弾ませんじゃねぇよバカ」

 ジャス、妨害なんかに負けんじゃねぇぞ。こんな窮地(きゅうち)で一人朽ちるなんてオレはゴメンだかんなぁ。せめて共に戦ってる中で倒れさせてくれよぉ。

 頂上に着いて、でっけぇ鳥かごの中に入れられてからも願い続けたぜ。あと羽毛、温けぇ。

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