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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第7章 大空のエア
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457 掻っ攫いし翼

 ジャーレフ達とのあからさまな扱いの違いを理不尽に思っていると、馬車からワイズが()い出てきた。かなり青ざめていて身体が小刻みに震えている。

「おいジャス。早いところそこのバカを説得して町に引き返すぞ。なんの準備も心得もない最悪のコンディションで魔王城なんかに挑めっか」

 撤退か。ジャーレフに追いつき、守りながらエアを討伐しようと考えていたけど引いた方がよさそうだ。ワイズの状態があまりにも酷すぎる。

 もっとも、ジャーレフが聞く耳を持ってくれればの話だけれども。

 やる気に満ちあふれ、使命感に燃えながら大空への塔を見上げるジャーレフ。今にも登っていきそうだ。

 うん。言葉で説得するとなると、魔王を討伐するよりも難しいかも知れない。どうしたものか。

「ねぇジャス。なんだったら私が実体で説得(おど)そうか」

 腕を組んで(うな)っていたら、アクアが耳元でとんでもない提案をしてきた。

「場が余計に混乱しそうだからやめてくれ。というかこんなところで前向きに本気の手助けをしないでくれ」

 普段の戦闘は傍観(ぼうかん)を決め込んでいるのに、こんな時だけ手を出されても困ってしまう。

 どうしようか手をこまねいていると、上空から甲高い鳴き声が響いてきた。見上げるとコンドルのような大型の魔物が急襲してきていた。

 (おお)(かぶ)さるように影が大きくなってくる。

 道中で襲いかかってきた魔物より一回(ひとまわ)り強い。アレに今対処できるのは一人だけだ。

「エリスっ!」

「でっかいわね。けど一羽で来るなんて命知らずもいいところよ!」

 矢に雷の魔力を込めて放つ。魔物は急激に飛来する矢を避けられずに被弾すると、バチバチと大きな音を立てて感電する。

 大した手際だ、一撃で仕留めるとは。誰もがその様子を見上げていただろう。

「うぉ!」

 弱々しい(うめ)き声で視線を下ろすと、ワイズが後ろから腰を抱きつかれて宙に浮いていた。

「なんかゴメンね。まさか二日酔いでダウンしてる状態で攻め込んで来るなんて思わなかったんだよね」

 ワイズの腰に巻かれた小さく細い腕。背後では黄色くて大きな翼が羽ばたいている。

「こんなところで魔王エアだと。ワイズを離せ!」

 油断した。大型の魔物を目眩(めくら)ましにして地上スレスレから接近したんだ。青ざめた表情でぶら下がるワイズが痛々しくて仕方がない。

「やだ。仮にも魔王呼ばわりされてる身だからね。ちょっと悪い事やっとかないと名折れしちゃうよ。ってわけでこの魔法使いは(さら)ってくね」

 子供っぽいお茶面な言い回しで鬼畜(きちく)所業(しょぎょう)を言い放つ。攻撃をしようにもワイズを盾にされている状態なので何もできないのがもどかしい。

「そうだね。ワイズを賭けてちょっとした競争をしよう。空の勇者さんたちが頂上まで登ってきて、ウチとの戦いに決着がつくまでは手出ししないであげる」

 提案された内容に、ボクとジャーレフは顔を合わせた。

「よかったな勇者ジャスよ。オイラ達が魔王を倒せばワイズの無事は確保されるようだ。大船に乗ったつもりで任せるといい」

 視線を送った事でボクがジャーレフを頼ったと思われたのだろう。けど逆なんだ。ジャーレフ達が辿り着く前にボクたちが辿り着けばそもそもの時間制限がなくなって有利になるんだ。

 競争なんて最初から二の次だ。けど、乗ってしまったジャーレフは間違いなく止まらない。

「いい気迫だね。バチバチって感じ。それじゃウチ達は頂上で待ってるから早く来てね。あ一応制限時間も設けよっか。一日経っても登ってこなかったら命の保証はないからそのつもりで」

「うぉぉぉぉ……」

 エアは言うだけ言うとワイズを連れて大空へと飛んでいってしまった。

 もう、突き進むしかない。

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