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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第7章 大空のエア
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455 宣戦布告

「ジャス様。ジャス様」

 ドアをドンドンと叩く音に耳に響き、むりやり意識を覚醒させられる。

「んっ、うぅ……なんだっていうんだ」

 ベッドで横たわっていた身体をどうにか起こして窓を見る。

 漏れ入ってくる日射しがまだ弱い。起きるにはとてつもなく早い時間じゃないか。おまけに少々身体も重い。

 声からして宿屋の主人だよな。なぜこんなにも朝早くに。

 冴えない頭をノック音が絶え間なく叩きつけてくる。不快さに若干の苛立ちを感じながら、ドアを開けて対応をした。

「どうしたんだい。こんな早朝に」

 言葉のニュアンスに不機嫌を滲ませながら、ややキツめに問い詰める。愛想笑いの宿屋の主人が頭をペコペコと下げながら対応する。

「すみません。非常識なのは重々承知なのですが、ジャス様を叩き起こしてでも呼んでこいと、空の勇者様が」

 視線を泳がせながら告げられた名前に、目をパチクリとさせてしまった。一体なんの用だろうか。

 なぜかすごく嫌な予感がしてきた。ジャーレフは好戦的で正々堂々と先手をとってくるような男だ。(はや)まった行動をしている気しかしない。

 軽く身支度を調えたボクが表に出ると、準備を調えたジャーレフが戦士と思わしき男達を引き連れて仁王立(におうだ)ちをしていた。自信の溢れる笑顔が憎い。

「遅いぞ勇者ジャス。ん、なんだその寝ぼけ(まなこ)は。オイラ達は平和な空を取り戻すべく準備を調えたというのに、随分とのんびりな事だな」

 状況を見た瞬間、顔が引き()ってしまった。今すぐにでも魔王エア討伐に向かってしまいそうな万全な態勢だ。

「のんびりってジャーレフ。昨日あれだけ夜遅くまで祭りをしていたって言うのに、こんなに早く出発するつもりなのか」

「無論だ。一刻も早く鳥神様に空を取り戻して差し上げなければならないからな」

 一切ブレる事なく首を縦に振るジャーレフ。間違った行動は何一つしていないと自負しているのだろう。

「えっと、一緒にいる方々は」

「彼らか。空の勇者ジャーレフと共に平和な空を取り戻すべく立ち上がったソル・トゥーレの戦士達だ。壮大であろう。勇者ジャスの仲間達とは体付きが違う」

 自信満々に紹介をするジャーレフ。各々が得物を携えており、そこそこ出来る事が窺える。言い換えると、そこそこ止まりの戦士達だ。

「オイラ達はこれからあの塔、大空の塔とか言っていたか。アソコヘ乗り込む。黙って向かってもよかったのだがフェアじゃないと思ったのでな、挨拶しに来てやった」

 太く焼けた指で大空への塔を差しながら言い張ってくる。

 なんと言う事だ。こんな事なら昨日の時点で、いつ出発するのか聞いておくべきだった。

 ボクが後悔してるのを知ってか知らずか、ジャーレフは笑いながら(きびす)を返して歩を進めだす。

「勇者ジャスはオイラ達の後からゆっくりと来るといい。もっとも、出番はなくなっているかもしれないがな。はっはっはっ」

 ジャーレフは近所迷惑にもなりかねない声で笑いながら、戦士達を引き連れて進行をしていった。

「まずい。休んでいる場合じゃない。すぐに追いかけないと、ジャーレフ達が危ない」

 ボクは急いで宿に入る。まだ微睡(まどろ)んでいる仲間達と、二日酔いで調子が悪いワイズを叩き起こして進軍の準備を急いで調えた。

 勿論、仲間達には文句を言われたさ。

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