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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第7章 大空のエア
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448 空の勇者

 (とも)されたたくさんの松明(たいまつ)が広場を覆い、夜の闇を照らしだしている。

 広場の中央には、動物や険しい顔を(かたど)って積み上げられた柱が立っている。トーテムポールと言うようだ。

 一番下は猿かな。そこから上に二つ顔が合って、一番上で鳥が羽を広げている。ソル・トゥーレを守りし神の象徴らしい。

 トーテムポールから程よく離れた大地に、木材を組んで積み上げた焚き火がゴウゴウと燃えていた。煙が昇り、夜空へ吸い込まれているようだ。

 地面に座り込み打楽器を叩く男衆に、生き物のようにゆらりと舞う布を纏いながら踊る若き女集。

 誰もが野蛮(やばん)な生命の力強さに溢れていて、その足で大地を力強く踏みしめている。

 環境こそ暮らすには厳しい地で、誇りを持って生きているんだと思い知らされる。

 みんな、自分に出来る事を精一杯にやって生きているだ。そんな姿を見ていると、こう、心の奥の消えかけていた炎が(くす)ぶられるような感じになってしまう。

 トーテムポールの下には料理と酒が捧げられている。

 広場の一角では酒と料理が振る舞われている。一際大きい鳥の魔物を丸焼きにしている姿は豪快で、取り分けられた肉には脂がのっていた。

 ボクたちは空の勇者を称える祭りに全員で参加をしていた。羽目を外せるようにそれぞれで分かれているので、ボクは今一人なわけだけれども。

 視線を巡らせば酒を飲みながら鼻の下を伸ばしているワイズが見える。別の場所ではクミンが地元民と酒の飲み比べをしていた。

 二人とも元気だな。

 エリスとアクアは一緒になって中央で踊っていた。見よう見まねでぎこちない動きだ。衣装だって普段着。けれどもソル・トゥーレの皆さんは飛び入り参加歓迎で、細かい事は気にしていない様子だ。むしろ楽しんだ者勝ちといった(てい)ですらある。

 若さ故のアクティブさが微笑ましい。

 不意に打楽器の音がデカくなる。女集は踊りながら道を作ると、ガタイのいい青年が堂々と歩いてきた。

 褐色の肌に赤い色でペイントされた目元と腕。頭には羽根飾りを被り、髪はややモジャっとした黒。黒い瞳には力強さが宿っている。

 青年がトーテムポールの下まで辿り着くと、振り返って拳を振り上げる。

 打楽器の音が消え、火のパチパチと鳴る音だけが広場に残る。

「みんな聞けー! オイラが今回、誇り高き空の勇者に選ばれたジャーレフだ!」

 発せられる声は脳を揺さぶるほど大きく、ソル・トゥーレ全体まで聞こえているんじゃないかと言うほどのうるささだ。

「空の神に誓い、あの忌わしき塔を粉砕し、太陽の塔が見守る青い空を取り戻してみせよう!」

 エアの魔王城を指差し宣言する様は雄々しく、頼もしさを感じられる。周囲にいたみんなも、うぉぉ! っと呼応の叫びを上げた。

「平和な空を取り戻すのは空の勇者であるこのオイラ、ジャーレフだ! パッと流れてついた流浪の勇者の支援など不要である!」

 ん? なんだか妙にケンカ腰というか、ボクに張り合ってないか? 太くて焼けた指に差されている気がするし。

「オイラが厳選した信頼ある仲間と共に必ずやソル・トゥーレを救ってみせよう! 今日はその前祝いだ! 存分に食らい、飲み、生きる力をつけようぞ!」

 ジャーレフ最後の宣言と共に叫びが上がり、命を吹き返すように打楽器の音と魅惑のダンスが蘇った。

 うーん。若さ故の拘りの強さかな。勢いは嫌いじゃないんだけど、ちょっと複雑だね。

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