442 色褪せる勇者
シャトー・ネージュでマリー派貴族の腐食した部分を聞かされたボクは、正しい復興の手助けをする合間に噂の真相を調べていった。
調査は簡単に進む。シャトー・ネージュに構えるマリー派貴族は、全て当主や重鎮がいないズタボロな状態。ボクを制止できる強者なんて殆どいなかった。
結果、調べれば調べるほど裏付けがされていってしまう。言い逃れが出来ないくらいに。
権力のある者がない者から奪うのが当たり前という考え方が浸透していて、そうでなければ異物扱いされる程だった。
そんな常識がまかり通っていて、不審にすら思わず野放しにし続けていた事にショックを隠せない。
何よりマリーと直接繋がっていた証拠までも出てきてしまう始末。誓い合った愛と平和と微笑み、心の中の思い出さえもが音を立てて崩れ去っていく。
気づけば、仲間達の励ましが遠く感じてしまっていた。
それでも、ボクは勇者として戦い続けねばならない。
シャトー・ネージュでの活動を終え、いったんロンギングへ帰還をする。
肌を刺すような寒さが和らぎ、着ていた防寒着がお荷物になっていく。途中途中でアクアに稽古をつけてもらっている衛兵達の目が輝いていて羨ましく感じた。
ただ強くなる事を考え、邁進する。今のボクには考える事が多すぎて、強くなって勝つ事が正しい事なのかもわからなくなっている。
ロンギングについてから戦線離脱する三人を労い、保証金と共に家へ帰した。悔しそうながらも満足した表情だったのが印象的だった。
新たな旅の物資を補充する合間に、城でマリーの自室を物色してみた。何も出てこないという、淡い期待を胸に秘めながら。
豪華な衣服や意匠を凝らした下着、様々な宝石の数々。勇者の姫と考えれば納得の品々なのに、これらを見繕う金はどこから出ていたのだろうかと考えさせられてしまう。
部屋を漂う甘い香りさえも、疑ってしまうほどだ。
無論、着飾ってはセンスを買い、経済を回していくのは貴族としての役目だ。けど、程度は本当に模範の範疇だったのか疑ってしまう。
違う。仮に模範の範囲内でも範囲外でも、ボク自身が見定める鑑定眼を持っていないのがおかしいんだ。
城で暮らしてから一年は経っていた。なのにそういったことを全く培ってこなかった。ボクの落ち度。
結局は何も見つからなかった。けどもボクは、ボクの無力さを知った。
なんか、疲れたな。
身体に力が入らないけども、それでも進む。
進まなきゃ、ボクがボクでなくなってしまいそうだから。
この足で、みんなと、ボクはソル・トゥーエへと歩いて行く。




