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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第7章 大空のエア
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441 想定不可能の敵

 亜人の子供達が囲う中、アクアがロンギングの衛兵達に順々と稽古(けいこ)をつけていた。

 雪がチラつく寒空の下で、流れる水と共に振るわれるトライデントに次々と倒されていく。

「こんなに寒い中よくやるわね。しかも衛兵達、意気揚々と負かされてるし」

 お願いしますと挑んでは、水浸しにされて震える光景が繰り返されてるわ。

 訓練になっているかも怪しい狂人(きょうじん)染みた行動だけれども、挑む側はみんな全力で気迫がこもっているから迫力あるのよね。観戦してる子供達が夢中で歓声上げてるぐらいだし。

 常闇城(とこやみじょう)を失ったショックが大きくてなかなか心を開いてくれなかったんだけど、ようやく打ち解けてきた感じかな。

 まぁシェイを倒してからも二週間シャトー・ネージュに滞在してるわけだけどね。

 ジャスは心をフラフラにしながら、孤児院作りと市民の盤石な生活基板作りに明け暮れていたわ。

 おかげで名声も高まったし、ジャスがテコ入れしている貴族達の支持も高まった。

 孤児院を作る土地は皮肉にも、壊滅した黒い奴隷商の跡地に(あて)がわれた。建物を建築するのは時間はかかるんだけど、安全に壊すのは一瞬だった。破壊するに至ってはワイズの魔法が一級品よ。

 ちょっとずつだけど順調に進んでる。ただ心配なんだよね、ジャスが倒れちゃいそうで。

「アクア様。ありがとうございました」

 衛兵達計二十五人が寒さに震えながら頭を下げる。常闇城での戦いで二人が戦死した。三人は戦線復帰が出来ないくらいのケガを負ってしまった。

 だからソル・トゥーレへ向かう前に、一度ロンギングに立ち寄らないといけない。実家へ帰す為に。

「エリスー、次はエリスの番だよ」

 アクアが無邪気な笑顔で手を振りながら地獄(とっくん)(いざな)ってくる。

「寒いんだから濡らさないでよ。それとちょっとは加減をしなさい」

 弓を手に、子供達が囲う特訓場へと歩を進める。期待に満ちた視線が痛くてしょうがないわ。アクア相手だとみっともない姿を(さら)すハメになりやすいもの。

 所定の距離で弓を構えると、アクアも腰を低くしてトライデントの穂先を向けてきた。

 最近は真正面からの立ち会いばっかだ。前みたいに何かに特化した意図のある特訓はしていない。

 気になったアタシはいったん構えを解いた。

「ねぇアクア。ちょっと前みたいな特訓はしないの?」

「前って?」

「デッドとかシェイの特徴に合わせた特訓よ。エアを想定した特訓をしてないから不思議に思ったのよ」

「その事ね。エアについては私、動きを再現する自信がないんだよね」

 自信がないって、デッドのクモの巣やシェイの影刃(えいじん)擬似的(ぎじてき)に再現してたあのアクアが。

「エアって小柄でスピードも速いんだけど、反面戦い方がパワフルで無茶苦茶な攻撃が好きなんだよね」

 小柄とパワフルって単語が既にケンカしてる気がするんだけど。

「空中からの空襲が得意な反面、組技を好む傾向もある。その場の勢いと直感で戦うから再現は難しいよ」

「つくづく無茶苦茶なヤツね」

 おとおさん(かたき)だって言うのに、情報を聞いても実態を掴めない不穏さがある。それでも、絶対に勝たなきゃ。アタシの気が収まらない。

「ただひとつ言える事は、エリスが強くならなきゃ勝てないって事かな。遠距離攻撃を得意とするエリスとワイズが、エアの動きを止めないといけないんだから」

 どの道役目は重要って事ね。上等よ、強くなってやろうじゃないの。

「だから、地力をあげる特訓をするしかないんだよ。さっ、始めるよ」

 やる気を込めて特訓に励んだアタシは、子供達に見られながら何度もボコボコにされたわ。

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