438 風の知らせ
タカハシ家二階建て一軒家の、一階の屋根に座って青空を眺める。
青空に浮かぶ白くてまばらな雲が風に乗って運ばれていく。ちょっと速いかな。そわそわしてる感じ。
ウチの黄色い前髪を揺らす風が、まるで急かすように背中を押してるみたい。
「うん。間違いないね。次はウチの番だ」
アクアの泣き叫ぶようなシェイの訃報は、タカハシ家全員が一斉に聞いた。
父ちゃんが崩れないか心配だったけど、近くにチェル様とススキがいてくれたおかげで踏ん張ってくれたみたい。ススキもいつの間にか存在が大きくなっちゃったな。
ま半分はシェイが事前に手を打ってくれてたのもあるんだろうけどね。
「心配事が杞憂に終わったし、ウチは戦いに備えないとな」
一世一代の晴れ舞台。勇者を相手にどうやって飛ぼうかな。ブレイブ・ブレイドと遊ぶ準備もしないといけないし、魔物の配備もしなくっちゃ。
「もー今から楽しみで仕方ないよ。けどちょっと問題あるんだよね」
シェイとの戦いでアクアが本格的に敵に回っちゃったのがキツいところかな。ウチ一人じゃどうしても手に余るんだよね。
アクアとの全力の戦いも楽しみではあるんだけど、まとめて戦うには不利すぎるかな。
アレコレ考えを巡らせていると、後ろから窓を開ける音が聞こえた。振り向くと眠そうな顔をしたフォーレが、窓枠にもたれかかっていた。
「あフォーレ。フォーレも日向ぼっこ」
「そぉ。すごくいい天気だもんねぇ。こんな日は光合成に限るよねぇ」
「いや光合成できるのフォーレしかいないからね」
だらしなくクタぁっとしながら陽を浴びるフォーレ。ウチに劣らず自由だな。
けど実力は折り紙付きなんだよね。普段は力が抜けるように生きてる分、ギャップが半端じゃないから侮れない。そんな身内が一緒に戦ってくれたら、無敵になれる。
再び空を眺めると、ウチの考えを肯定するように力強い風が吹いた。
「決めた」
「何をぉ?」
「勇者との戦い。ウチはペアを組んで戦うって」
二人で戦えばアクア達と互角の戦いが出来るようになる。チームプレイなんて贅沢な事は言わないけど、敵の戦力を分断させるバディがいる。
「へぇ。さすがエアだねぇ。おもしろい事を考えるよぉ」
「でしょ。二人ならきっと、嵐のような激しい戦いを巻き起こせる」
飛び甲斐のあるスリルな風がビュンビュン吹いちゃうね。勇者達は勿論、アクアだって巻き込んじゃうんだから。




