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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第6章 本影のシェイ
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435 答え合わせ

 シャトー・ネージュに凱旋(がいせん)したボクはワイズとクミンと共に、救出した子達を受け入れるべく孤児院の環境作りに着手する。

 エリスは心身が疲れているであろうアクアについて休んでもらっている。

 助け出した子供の九割以上がなにかしらの亜人だったことに驚いたが、幼くかけがえのない命には変わりはない。

 途中で気づいた事だが、孤児院よりも親御さんの元に返してあげるのが最善であると。

 すぐに子供達に話を持ちかけたんだけど、想像していた明るい反応は返ってこなかった。それどころか距離感のある、警戒心をむき出しにした態度をとられてしまった。

 見ず知らずの大人を警戒するのは仕方のない事かもしれない。けれども魔王城から救い出された子供の態度なのかと考えると、もうちょっと(なつ)いてくれてもいいように感じられるのだが。

 違和感はあるけれども、時間をかけながら誠意を持って接すればいずれは打ち解けてくれるだろう。

 貴族の娘も無事に助け出し、家族と感動の再会を()の当たりにする。こういうふと涙が出そうになる瞬間に、勇者としてがんばってよかったと感じさせられてしまう。

 やっぱりボクの道は間違ってなかったんだと。

 今日のところは無粋(ぶすい)堅苦(かたくる)しい話はなしにして、家族水入らずにさせてあげようと退出しようとしたが、助け出した娘に呼び止められてしまう。

 常闇城で体験した事、そして教えられた情報を勇者(ボク)に伝えたいと。

 まず攫った子供の(ほとん)どは、違法な奴隷商の手でむりやり奴隷に落とされてしまった被害者らしい。扱いも酷く、死ぬ寸前の子は勿論、手遅れの子もいたそうだ。

 買い手がつかなければ餓死、買い手がついても殆どはゲスな金持ちの悪趣味な道具にされる未来しかない。どの道救いのない状態の子達だった。

 違法故に金の動きも大きく、奴隷商を抱え込む貴族もたくさんいた。その殆どがマリー派の貴族だったと。

 ボクはこの時点で、頭が働かなくなってきていた。ソレなのに話は続く。

 マリー派貴族が違法奴隷商を抱えていた理由はみっつ。金と、奴隷と、手荒な手段。

 貴族の娘が奴隷商に攫われたのも、マリー派に目をつけられたのが原因だったらしい。

 そして常闇城での暮らしについては、かなり手厚い歓迎だったらしい。

 衰弱(すいじゃく)した子供は奴隷メイド部隊による看病から生活が始まり、元気になったら勉強や体力訓練、家事なんかも教えてもらったと。

 幼い子は全力で遊び回ってたらしい。

 魔物を鬼役にした鬼ごっこもやったそうだし、温水に浮かぶ板を走って渡るのもスリルがあっておもしろかったと言っていた。

 シェイが常闇城の事を、受けがよくて甲高い叫びが絶えないと言っていたが、まさか遊び場として提供していたとは思わなかった。

 ボクたち相手にしたときは普通に冷水で殺意に満ちあふれてはいたけれども。

 とにかく子供達は全員シェイや奴隷部隊、果てにはシェイの魔物達に至るまで懐いていたらしい。

 奴隷商に攫われた事で諦めてしまった人生を、再び彩り豊かに染めてくれたのが常闇城という場所だった。

 そんな場所が勇者の進軍によって崩壊した。遊んでくれた魔物達は救出班によって退治され、育ててくれた奴隷部隊も武器を取って救出班と戦い、全員が命を落としたと。

 最初こそ救出班も奴隷メイド部隊も助け出そうとしたようだが、シェイの部下という矜持(きょうじ)が否定をしたようだ。

 奴隷メイド部隊なんて戦いとは無縁そうな名称だけど、救出班と互角に戦えるほど善戦したようだ。

 元々戦闘訓練をしていたらしいから、多少は戦えたのだろう。

 子供達から見たら、第二の平穏な故郷をぶち壊されたも同然だ。シェイを倒したボクたちに懐くはずがない。

 それでもシャトー・ネージュではシェイの支配が終わった事で街中が歓喜している。

 勇者とは、正義とは一体なんなんだろうか?

 最後に伝えられたのは、ボクのメイドでシェイのスパイであったヒナが掴んでいたマリーの活動だった。

 いやだ、知りたくない。

 反射的に心が拒否をした瞬間、少女の声が脳内に響いた。

 勝手に正しいと思う道を突き進めば。後で答え合わせて、泣いてもしんないんだから。と。

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