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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第6章 本影のシェイ
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427 手塩をかけて

「えっ、アクア?」

 困惑するエリスの声を背中で聞きながら、シェイの大きな単眼と見つめ合う波紋(はもん)ひとつない水面のように冷静な瞳をしてる。

「気でも狂いましたかアクア。今ならまだ、ちょっとした気の迷いという事にして差し上げられますが」

「ゴメンねシェイ。私、このままエリスを見殺しになんてできない」

 力尽くで双剣を押し返してから、ボディに蹴りを入れる。手応えが浅い。攻撃に合わせて跳ばれてる。

 シェイは遠くで着地をすると、双剣を構える。

「本当に、アクアは自分たちの敵に回るのですか。もう言い逃れは出来なくなりますよ」

「守りたい人は生きてる内にしか守れないもん。エリスを守る為なら、私は勇者につく」

 どんなに距離が空いてても、シェイなら一瞬で詰めてくる。油断なんて出来ない。いつきてもいいように、トライデントを強く握る。

「……ふっ、ククっ。はははははっ」

 不意にシェイから漏れた笑い。構えまで解いて、肩を揺らしてのけぞりながら無防備に声を出す。

「シェイ?」

「やはり、エリスを狙えばアクアを戦場に引きずり出せると思っていましたよ。手塩をかけて育てている最中(さいちゅう)ですもんね。失いたくない気持ちは自分もよくわかりますよ」

 悲しげに微笑みながらゆっくりと歩み寄ってくる。自然体なんだけど、隙がない。

「仮にワイズやクミン、ジャスを先に狙ったらアクアは見殺しにしていたでしょう」

「何言ってんのよ。アクアはアタシたちと一緒に旅してたのよ。仲間を見殺しに出来るわけないじゃない!」

 シェイの問いにエリスが全力で反発する。でも私、そんなに優しいつもりもないからね。

「あー、間違いなく見捨ててたね」

「ってアクア!」

「だってみんながみんな大切なわけじゃないんだもん。エリスだったからシェイの敵になる覚悟が決まったの」

 エリスは納得できないかもしれないけどね。

「ひとつわからないんだけどさシェイ。どうして私を戦場に引きずり出したの?」

 今更私と戦っても意味ないと思うんだけど。

「本気でアクアと戦い、勝ってみたかったからですよ」

「やだなシェイ。私がシェイに敵うわけないじゃん。何度だって模擬(もぎ)(せん)しては負け越してるんだよ、私」

 本当に今更な事を言ってくるもんだから笑い飛ばそうとしたんだけど、シェイの眼差しが真剣なものから緩まない。

「模擬戦と実戦は別物です。自分はずっと、全力を出したアクアを越えたいと思っていました」

 不意にほぐれる表情。家族の慈愛に満ちていて、それでいて嘘偽りのない本音。私も思わず口元が綻んじゃうよ。

「もー、シェイってば。買い被りすぎだって」

「言い合っていても結果は出ません。実際に戦ってみなくてはね。自分の全力、受けとって下さいね。お姉ちゃん」

「……しょうがないなー。ドーンときなよシェイ。お姉ちゃんだって強いんだから」

 と啖呵(たんか)を切ったのはいいんだけどね。私じゃシェイのスピードについていけるか怪しいんだよね。

 けど、シェイが珍しく駄々(だだ)()ねてるんだもん。お姉ちゃんとして受けて立たなくっちゃ。

 全力の姉妹ゲンカ、やってやろうじゃん。

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