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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第6章 本影のシェイ
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426 波のよう揺れ動く

 シェイ凄い。ブレイブ・ブレイドを攻略しちゃった。やっぱりシェイは強いよ。けど、ここからどうやって負けるの?

 ワイズとクミンに続いてジャスまでも戦闘不能に追い込まれた。エリスはまだ戦えるだろうけど。

「そんな。ジャスのブレイブ・ブレイドが(やぶ)られるなんて」

 呟かれた絶望。弓は辛うじて握っているけど、表情は青ざめていて身体がずっと震えてる。

 勝ち筋なんてまるでない。もう、どんでん返しなんて起きっこないよ。

「どうやら本当にここまでのようですね。期待外れでしたが、まぁこんなものでしょう。後は、誰からトドメを刺していくか、ですかね」

 シェイは表情を変えないまま、大きな単眼で倒れている勇者一行を順々に眺めた。

「ひっ」

 視線を向けられたエリスが恐怖のあまり一歩、二歩と後退ってしまう。

「そうですね。エリス、あなたから死んでもらいましょうか。生きてきた証など残さぬよう、粉微塵(こなみじん)に刻んでしまいましょう」

 粉微塵はダメ。いくら即死を肩代わりするアンクレットを装備していても、そんなにされたらエリスが死んじゃう。

「やめ……ろ」

 小さくも重いジャスの声。這いつくばった状態で睨み上げる気迫は凄まじい。でも脅威は全然ない。

「弱者がお願いをする時は敬語を使ってゴマをするのが一般的なのですけどね。些細な事なので許してあげます。勇者の目の前で、一人ずつ、確実に殺して差し上げますから」

 波のように心が揺れ動く。シェイ、本気だ。

「止めたければ実力行使しかありませんよ。弱者が奪われる事を(とが)める権利など、戦場にはないのですから」

 激しくなる波。うるさいくらいに鳴り響く鼓動。何もしないままだと、目の前で奪われる。エリスの命を。

「それとも奇跡にでも(すが)りますか? エリスの偶発の一矢が自分を捉え、一撃で倒すとか。百回リセットを繰り返せば一回ぐらいはそうなるかもしれませんよ」

 嘘だ。百回殺しにかかったら、百回とも成功させてしまう。確実に、死ぬ。

「さて、お喋りはそろそろ終わりにしましょうか。エリスを失う準備は出来ましたね。運命を受け入れ、大人しく見ていて下さい」

 シェイが大きな黒い眼差しに殺意を込めた瞬間、私の中の波が心を飲み込んだ。

 シェイは充分にあったエリスとの距離を一瞬で詰め、振りかぶった黒い双剣を下ろす。

「ぁ! いやぁぁぁぁぁあ!」

 私は甲高い悲鳴を背中で聞きながら、シェイの双剣をトライデントで受け止めた。

 ダメだね。もう完璧に観戦に(てっ)する気持ちが転覆てんぷくしちゃった。

 私、決めたよ。エリスは殺させないって。

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