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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第6章 本影のシェイ
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424 強者のムーブ

 刃が抜けて倒れ込むワイズ。辛うじて息はある。全部急所から外れていた、いや魔王シェイの精密(せいみつ)さから考えて外されていた。けどあの傷を放置していたら結局死んでしまう。

「ぐっ、早く回復っ」

「そんな余裕があるとでも?」

 ない。絶え間なく襲い来る影刃(えいじん)が鋭すぎて、近付く事さえ許されない。対処するだけでいっぱいいっぱいだ。

「しかし遠くから(なぶ)るだけでは芸がありませんね。戦いの花はやはり、接近戦でしょう」

 シェイが黒い視線をクミンに向けると、瞬時に両手を振りかぶって接近をした。

「なっ、ざけんじゃないよっ!」

 強襲に驚きつつ、反射的に横振り放つクミン。しかし影から無数に現れる刃に大剣を防がれ、硬直を晒してしまう。

「止められたっ」

「遅い」

 平行に下ろされた二本の剣が、クミンの右肩から左脇を切り裂いた。大剣を落とし、仰向けに倒れ込む。

「クミンっ!」

 荒い呼吸を繰り返しながら、床を赤いもので侵食してゆく。即死ではない。けど致命的。

「ちょっといい加減にしなさいよ!」

 跳びながら怒り任せに矢を放つエリスへ、シェイは右腕の剣を振るう事で影を飛び散らせて闇スリケンを精製する。

「いい加減? まだ始まったばかりですよ」

 闇スリケンの数は放った矢の数よりも遙かに多く、跳んでいたエリスの肌を切り裂いた。

「きゃぁぁぁあっ!」

「エリスっ!」

 身を縮込ませて防御の態勢は取ったものの、それなりにダメージを受けているだろう。一気にやられてしまった。

 とにかくこの厄介な影刃をなんとかしなければ……なんと、か。

 息つく間もなく出てきた闇の刃がどんどんと遅くなり、数も少なくなる。

 何が起きた。まさかバテたか?

 視線をシェイに向けると、無表情でこちらを眺めていた。とても疲れているようには見えない。

興醒(きょうざ)めですね。このまま圧倒してもよかったのですが、ソレでは味気がなさ過ぎます」

「なにっ」

「ブレイブ・ブレイドを撃つには溜めがいるのでしょう。猶予は与えてあげましょう。最後のチャンスになるかもしれません。放ってみてはいかがですか」

 浮かべる冷笑。明らかな挑発。空け透けて見える絶対の自信。危険だ、けど。

 視線を仲間の元へ送る。重傷のワイズにクミン。エリスはまだ動けるし弓も握っているけど、戦いが長引いたらいずれは。

 そしてもう一人。徹底して壁際から動かないアクア。今回は標的にされる事なく、観戦に徹している。ただし表情は真剣だ。

「どうしました。怖じ気づきましたか」

 嫌な予感がする。でもこの機を逃すと、ブレイブ・ブレイドを使う間もなく負けてしまう。使わざるを得ない。

 剣に勇者の力を集中させる。いつだってこの必殺技で活路を開いてきた。絶対の自信を持っている。大丈夫、大丈夫、負けない。

「魔王シェイ。君は確かに強かった。けどその慢心は、致命的だ」

 撃たされるという拭いきれない不安は、念を入れる事でカバーをする。

「いくぞっ。ブレイブ・ブレイド!」

 決まってくれと願いながら、ボクは必殺の一撃目を放った。

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