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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第6章 本影のシェイ
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418 全滅

 コタツに入りながらたっぷりと疲れを癒やしたボクたちは、黒い引き戸を開けて先に進んだ。

 短い一本道。奥には黒色の引き戸。そして戸の向こうから、ボクたちを切り裂かんとする鋭い闘争心が発せられている。

 間違いなくいる。魔王シェイが。

「おいおい、扉越しでこの圧力かよ」

「ビビってんのかいワイズ。玉の小さい男だねえ」

「頼もしい言葉で嫌になんぜ」

 ワイズとクミンが身震いをしながら言い合う。

 エリスは緊張で顔を強張(こわば)らせ、アクアはぎこちない笑顔を浮かべている。

「覚悟はいいかい。いくよ」

 両手で引き戸に手をかけ、勢いよく左右へ開ける。

 薄暗く拾い室内に、黄緑色の砂壁。床には草の臭いがする床材が敷き詰められている。

「随分とごゆっくりされていたようで。常闇城はいかがでしたか」

 部屋の中央で正座をしながら、魔王シェイが問いかけてきた。(そば)には刀が置いてある。

 透き通るほど白い肌に黒い瞳。眉前で切りそろえられた艶やかな黒髪。身体の線は細く小柄で、触れたら折れてしまいそうな繊細(せんさい)さをしている。

 だと言うのに、視線の鋭さが(やわ)幻想(げんそう)嘲笑(あざわら)っているかのようだ。相対しているだけで油断が出来ない。

「趣味の悪い仕掛けばっかでゲンナリしたぜ」

「お気に召さなかったのですね。預かっている子達には受けがよかったのですけどね。甲高い叫びが絶えなかった程ですよ」

 まさか、人質達をあの極悪な罠で(もてあそ)んだというのか。

「おぉ怖い。ちょっと遊んであげただけだというのに、そんなに(にら)まないで下さいよ」

 魔王シェイは刀を持って立ち上がると、薄ら寒い笑みを浮かべた。

「あんたの野望もここまでだよ。今頃救出班が人質を助け出してるところだからね」

 クミンが大剣を構えながら啖呵(たんか)を切る。歯を噛み締め、一挙手一投足を見逃さないよう視線を鋭くする。

「あぁ、そのことですか。安心して下さい。預かっていた子達は無事に、あなたたちの救出部隊が回収しましたよ」

 呆気なく朗報(ろうほう)を伝えられる。信憑性(しんぴょうせい)の欠片もないけども。

「にしてもガッカリです。奴隷部隊は自分が手塩にかけて育てた部隊なんですけどね。呆れを通り越すほどの無能でした。一人残らず全滅してしまうとは」

「なっ」

 ボクだって一人しか知らないけど、その言い草はない。赤目の少女が死してなお、あれほどまでに魔王シェイを(した)っていたというのに。

「随分と冷てぇ言葉じゃなぇか」

「その言い方はないんじゃないかい。あの子が聞いたら悲しむよ」

「あんなに忠誠心凄かったのに、無能呼ばわりするなんて酷いじゃない」

 やり場のない怒りを覚えたのはボクだけではない、ワイズもクミンもエリスも怒りを表情に表していた。

「無能ですよ。揃いもそろって、簡単な(めい)(まっと)うできないだなんて」

 静かな怒りが溢れ出てきて、思わずたじろいでしまった。押し込めている殺意が(あふ)れ出てくるようだ。

「バカな部下達のおかげで、一矢(いっし)報いたくなったじゃありませんか」

 魔王シェイは視線を鋭くさせながら、鞘に入った刀を両手で持って正面に突き出した。右手で()、左手で(さや)を握っている。

「自分はシェイ。シェイ・タカハシです。手合わせ願いましょうか」

 宣言すると同時に、姿勢を低くして突っ込んできたのだった。

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