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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第6章 本影のシェイ
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415 落胆と幸運と

「常闇城って陰険(いんけん)なトラップが多くてやんなっちゃうわ。みんなと離ればなれになっちゃったし」

「シェイは陰険じゃないんだけどね。どちらかって言うと趣味を詰め込んだ感じな気がする」

「その趣味が陰険なんじゃない」

 まぁアタシの所にはアクアっていう話し相手がついてきたんだけどね。心強いと思うべきか、信頼されていないとみるべきなのか。

 みんなと分断されると、壁に通路が開いたわ。どんな罠でも真正面から突破してやろうって思ってたんだけど、何もない一本道で肩透かしを食らってる気分よ。

「そう言わないの。勇者を招く拠点を作るのってなかなか難しいんだから。そもそもどういう仕掛けだったら陰険じゃなくなるの?」

 そういやアクアって敵だったっけ。魔王城アクアリウムもめんどくさくてなかなか陰険だったし、デッドの魔王城、蠢きの洞窟も魔物が多すぎてかなり面倒だったっけ。

「陰険じゃない魔王城って存在しないわね」

「でしょ」

 思いっきり(しか)めっ面しながら言ってやったんだけど、楽しそうな笑顔の一言で返してくる。どうして侵攻する側が手のひらの上なんだろう。

 溜め息出ちゃうわ。ん?

 細長い一本道の真ん中で、サラリとした黒い短髪の少年が座ってアタシ達を睨んでるわね。青い瞳に、魔王シェイに似た黒の装束を着てる。

「まさか……まさかまさか、ハズレとアタリを同時に引く事になろうとは思わなかった」

 青い瞳がアタシを見据え……あれ、ちょっと視線逸れてない?

「人間の男の子よね。まさかお子様一人でアタシに挑もうってんじゃないでしょうね。勇者の仲間を舐めないでよ」

 少年が立ち上がりながら、両腰に下げた二本の刀を抜いて構えた。

 アタシも弓をとり、(げん)を引く。

「あんた、ジャスから聞いた奴隷部隊ね。人間のクセして魔王と仲良くなるなんて気が狂ってんじゃないの?」

 臨戦態勢で睨みながら挑発をすると、小馬鹿にするような一笑を漏らしやがった。(かん)に障ることするじゃない。

 カチンときた瞬間に、少年が駆け出してきた。(おく)れをとる形で矢を連射する。

 こいつ矢が迫ってるっていうのに、スピードを緩めずに刀で弾きながら急接近してきた。子供だからって手加減せずに急所を狙って属性を纏えばよかった。

 後悔している間もなく、刀の射程まで接近されてしまった。マズい、斬られる。

 間に合えと祈りながら矢を引いて、眼前まで迫ってきた少年に矢を放つ。

「なっ、消えたっ!」

 あまりの速さに見失ってしまった。驚愕していると、後方からキンっと、金属のぶつかる音が響いた。振り向くと、アクアが両手に持った二本のトライデントで、少年の刀を受け止めていた。

 少年は力でゴリ押そうと力を込めるが、アクアは余裕の表情で受けていた。

 どういう事?

「やだなー。あなたの相手は私じゃなくてエリスだよ」

「そこのザコに興味はない。折角アクア様と相対せたのです。オレの手で、シェイ様の戦場まで引きずり出してやります」

 ザコ? アタシ? つまり、眼中にないと? キレそうなんだけど。

 アタシが青筋立ててろ事を気にもせず、少年はいったん後方に跳んで、再びアクアへと斬りかかる。

「シェイ様に認められるほどの実力者。オレが命に代えても、高みの見物席から引きずり下ろしまっ……」

 勢いよく突っ込んでいった少年だったけど、刀を弾かれてトライデントを喉元に突きつけられた事で言葉が途切れた。

 悔しそうに奥歯を噛んじゃって。ざまーみろ。

「コレで一回死んだね」

 それにしても、改めてアクアって強いわね。アタシがついていけなかった相手を一瞬で無力化するんだもの。

「くっ、決着を着けたいなら殺せばいいだろう。オレが弱かった。強くなれなかった。その結果をわからせて下さいよアクア様」

「決着までやりたかったらさ、私の前にエリスを倒してよね。その後でなら好きなだけ相手してあげる」

 え? ちょっと待って。トドメの一歩お手前までやっておいてアタシに回すの?

「驚かないでよ。元々エリスの敵なんだよ。強さも申し分ないし、きっと彼との経験がエリスをもっと強くする」

 信頼の笑みで説得しないでよ。さっきの攻防、アタシがターゲットだったら間違いなく斬られてたんだから。

「ソレに、この子ぐらい倒せないようじゃシェイに挑む資格なんてないよ」

 そうよ。アタシは魔王シェイを倒す為にここまで来たんじゃない。手下ぐらい倒せなくてどうするのよ。

「ふふっ。いい表情(かお)。仕切り直しにしましょ。君もそれでいいよね」

 アクアはトライデントを少年の首元から放すと、壁際へと離れていった。

「不服ですが仕方ありませんね。シェイ様にとってのオレが、アクア様にとってのお前というのなら、斬り捨てて差し上げますよ」

 少年は歩いて位置を整えながら、初めてアタシを青い瞳で捉えてきた。

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