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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第6章 本影のシェイ
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414 道を貫く事

 閃光のように痛みが頭を駆け巡る。薄暗いはずの天井が赤く染まっている。鉄の臭いがツンと鼻を刺激している。

「……っ!」

 遠く激しい声が聞こえる気がする。けど意識が集中しない。

 仲のいい友達と遊んでいたかった。力がないから奪われてしまった。魔物に襲われ、命が奪われる間違った日常。

 ボクは勇者として目覚めて、正しい道を勝ち取る為に死に物狂いで強くなった。当たり前の日常を壊させない為に。

 魔王アスモデウスを倒して、誰もが笑って暮らせる日常を掴み取った。正しい道を進み通したから、平和な景色を見られるようになった。

 タカハシ家が間違いを犯したせいで、ボクは大切な人を失った。惨劇が人々を不幸にし、みなが大切な誰かを失ってしまった。

 やはり、道は間違えられない。

 意志が無意識に剣を握っている右腕を突き伸ばさせた。

「なっ……あっ……」

 右腕にのしかかる重み、降り注ぐ生暖かい液体。意識がシッカリ戻ると、ボクは宙から襲いかかる少女の身体を突き刺していた。仰向けに倒れた状態で。

 驚愕にオレンジの瞳を見開きながら、ボクの隣に落ちてくる少女。深々と刺さった剣が、痛ましくて仕方がない。

 意識がハッキリすると同時に、痛みと気持ち悪さが襲いかかってくる。

 そうだ、腹と額に攻撃を負ったんだ。

「ヒール」

 回復魔法を使うと若干痛みが引いていった。まだ頭はグワングワンするし、気持ち悪さも継続している。けど辛うじて動けるようにはなった。

「ちょっと、意識失ってたでしょ……なんで動けたのよ」

 息も絶え絶えに、か細い声が口から漏れ出てくる。

「正しい道の為に、身体が勝手に動いたんだ。まだこんなところで終われない」

 このまま何の手当もしなければ死んでしまうだろう。早く治療を施さなければ。

「勇者って窮屈ね。ゴホっ。選んでる道が間違ってるだなんて、思いもしないんだもん」

「文句は後でいくらでも聞いてあげるから、今は身体を休めるんだ。剣を抜いてすぐに回復魔法をかける」

「あーあ、あとちょっとで倒せたのにな……いいよ。勝手に正しいと思う道を突き進めばさ。後で答え合わせて、泣いてもしんないんだから」

 少女は微笑みながら懐に手を突っ込み、丸いものを取り出して火をつけた。

「シェイ様。ワタクシ、楽しい人生だったよ」

「なっ」

 少女の持っていた物が爆発し、ボクの剣が足下に転がってきた。

 煙が収まった後に、少女の面影は残っていなかった。

「どうして、最期まで間違った道を突き進んでしまったんだ」

 少女一人助け出す事が出来なかった無力感に(さいな)まれながら疑問が浮かび上がる。

 無意識に思い出した幸せに、なぜかマリーとの甘い日々が入っていなかった。

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