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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第6章 本影のシェイ
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411 力とスピードと

 パーティを分断されるとはねえ。会話を聞いてる感じ、それぞれに通路が開かれたみたいじゃないかい。

 ジャスは問題ないだろうし、エリスにはアクアがついてるからまず大丈夫。ワイズ辺りが生き残れるか不安だよ。

「まっ、心配しててもしょうがないか。にしても、ワシはどこに進めばいいんだい?」

 大部屋で分断されたはいいけど、通路なんて一向に出てきやしないじゃないかい。試しに壁を叩いたり草の香りがする床材を探ってみたりみたんだけど、手応えなかったよ。

「まさかワシだけこのまま閉じ込めるつもりじゃないだろうね……ん?」

 途方に暮れて突っ立っていたら、分断していた壁が天井へ戻っていったよ。

 元の大部屋に戻ったのはいいけど、みんな出発しているから結局ワシは一人だねえ。

 きっとワシ以外の全員が進んで退路を遮断されたところで、壁が天井へ戻る仕組みになってたんだね。

「天井からハシゴとか床に通路とか言ってたけど、形もないじゃないかい。代わりにあるのは、奥へと続く通路がひとつかい」

 通ってきた道とは違うから、奥に進む道で間違いなさそうだ。

「まどろっこしい事をしてくれるじゃないかい。出遅れた分、急がないねえ」

 とはいえコレまで散々人をバカにするような罠が仕掛けられてたんだ。気が滅入ってしかたないよ。

 溜め息交じりに通路へ歩み寄った瞬間、通路がバッと舞って影からロングの黒髪を束ねた少女が迫ってきた。

「なっ!」

 とっさに跳び退きながら背中の大剣に手を伸ばしかける。

 ダメだ速い。剣抜いてるられない。

 赤く鋭い眼光で、刺突用の細長く三つ(また)に別れた短剣を両手に突っ込んでくる。

 突きに合わせて上体を反らし、左腕にかすり傷を負いながらも回し蹴りを放つ。

 少女のガードが間に合い防がれるも、力任せに足を振り回して吹き飛ばした。

「油断したよ。よくわからん出てきかたするじゃないかい」

 切り傷から滴る血を無視しながら背中から剣を抜き、切っ先を少女へ向ける。チラリと通路の方を見ると、黒い布が床へと舞い落ちてきた。

 まさかあの布に隠れる事で、視覚的に通路と同化させていたのかい。薄暗いせいで気づけなかったよ。

「さすが勇者の戦士といったところですか。今の不意打ちを対処するとは」

 少女は武器を構えながら油断なく赤い瞳を光らせる。魔王シェイと似た黒い装束を着込んでるけど、明らかに人間じゃないかい。

「ジャスたちが言ってた奴隷部隊かい。人のクセして魔王に付くなんて気が知れないねえ」

「何でもかんでも人の為と盲信するよりは、数段マシですよ」

 若いのにいい闘気じゃないかい。胆力も大したもんだよ。人に害をなす敵だっていうのが憎いねえ。

「世の中には捨てる神もいれば拾う神もいるそうです。ワタシは、捨てた方の神に縋るつもりはないんですよ!」

 突っ込んできた。軽い武器を選んでるだけあって速いね。けどその信念。ワシのパワーで武器ごとへし折ってやるよ。

「何に捨てられたかは知んないけどね、拾った方の神もまともじゃないんじゃないかい!」

 タイミングを合わせての横振りが身を低くした事で躱される。

「まともじゃなくても構いませんよ。尊敬できるだけで充分です」

 そりゃ躱すだろうね。体勢が崩れてところを攻撃したいだろ。今のワシは胸部ががら空きだからねえ。

 大剣に身体が振り回される勢いを利用して、少女の上がってきた顔面に蹴りを放つ。

「上体への突きはフェイントですよ」

 少女は上げた顔を再び沈ませ、走りながら軸足を斬りつけられた。

 鋭い痛みに、床に転がり落ちてしまう。

「ぐっ……」

 痛みを堪えながら追撃に備える。少女は駆け抜ける勢いのままに距離を取り、体勢を整えていた。

 やるじゃないかい。魔王シェイとの戦いにとっておきたかった少ないポーションを足にかけながら、視線を切らさないように大剣を握り直したよ。

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