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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第6章 本影のシェイ
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409 孤独の魔法使い

 ったく。常闇城は次から次へ人をおちょくるようなトラップを発動させやがるぜ。

 挙げ句の果てに単独行動させるなんてよぉ。上等じゃねぇかクソがっ。

 大部屋でみんなと遮断された瞬間、床の一部が開いたぜ。覗いてみるとハシゴが下に続いてやがった。変なルート辿らしてくれんじゃねぇか。

 降りてからはずっと一本道が続いてやがった。曲がり角やら階段やらはあったものの、通路以外は何もねぇ。

 魔物も出なければトラップも仕掛けられてねぇ。

 ただ薄暗い通路が続くだけだ。

「妙に何もねぇじゃねぇか。まさか一人になった心細さでメンタル的に弱らせる為の作戦なんかじゃねぇだろぉな」

 もしもそうなら勘違いも(はなは)だしいぜ。一人旅を恐れるような仲間はエリスぐらいしかいねぇ。

 そして肝心のエリスにはアクアがついてんだ。歩を止める事はあり得ねぇ。

「にしても(くれ)ぇな。何度か曲がり角もあったんだが、突き当たる直前になるまで気付ねぇほど暗いのはどういう了見だっての」

 ライトの魔法を試しても暗闇に負けて全然照らせねぇしよぉ。陰険(いんけん)な事を城だぜホント。

「けどまっ、迷路になってないだけマシ……ちぃ!」

 来やがったな!

「ウィンドカッター!」

 前方から感じた空気のゆがみに風魔法をぶつける。結果は相殺。おそらくは同タイプの魔法。

「さすがは勇者様の魔法使いだ。視認しづらい風魔法に気づいて対処するとは。小手調べの挨拶程度じゃ不意は突けねぇか」

 暗がりから足音を立てながら現れたのはガタイのいい少年だったぜ。背も高いな。黒の角刈りに紫の瞳。黒い装束を着てる。手に持つ得物(えもの)は……(こん)か。

「おいガキ。お遊びのつもりならすぐに引き返せ。そうすりゃ今のはなかった事にしてやっからよぉ」

 退(しりぞ)いてくれりゃ御の字なんだが、そうもいかねぇだろぉな。おそらくは奴隷戦闘部隊の一人だろぉ。魔王城(こんなとこ)まできて人間と対峙しなきゃいけねぇとはな。

「油断なく臨戦態勢で構えときながらつれない事言うなよ。折角魔法使いと当たれたんだ。魔法合戦しようぜ」

 不適に笑いながら腰を低くして棍を向けて構えやがる。魔法使いの構えじゃねぇぞ。

「笑わせてくれるじゃねぇか。パワータイプな体付きしてよぉ。魔法で競う気あんのか」

 まっすぐな廊下での戦闘か。正面のみに集中すればいいから魔法使いっていうか、遠距離タイプの方が有利だ。距離が開いているなら、だけどな。

 互いに武器を向き合わせて対峙する。いや、相手さんは足の指を器用に動かして構えた状態でにじり寄って来てやがる。

 しゃーない。この気温でやるのは気の毒だが、凍り付いてもらうぜ。

「フリーズ!」

 先に動きを封じ込めちまえばそれだけで決着だ。後は進路の後方に置いていけば壁なんていくらでも作れるからな。

「随分とお優しいなぁ。そんな程度でボクをやり過ごそうなんてよぉ」

 少年は棍をグルグルと振り回しながら突っ込んできた。棍の両先端には炎が灯り、凍結魔法を弾きながら接近してくる。

 ちっ、甘かったか。

 とっさに魔法を連射するも、全て棍で弾かれてしまう。瞬く間に懐に潜り込まれた。

「もらった!」

「うぐっ! がはっ! はっ……」

 炎を纏った棍で放たれる渾身の突きがオレの胸に入る。風を纏いながら後方に跳んでみたが、衝撃が半端じゃねぇ。

 ケツから落下して、咳き込んじまう。肺は潰れてなさそうだが、息がきちぃ。

 魔法も体術も大したもんじゃねえか。オレの長所を潰しながら短所を攻めてくるとはよぉ。

 少年は棍を床につきながら、大股で見下ろしてやがったぜ。

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