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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第6章 本影のシェイ
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386 贅沢な手加減

 昼食を食べ終えてから自分は、グラスに連れられて魔王城タカハシにある鍛冶場へと移動しました。

 高級な魔物の素材を使った贅沢な環境。初心者のお供から癖が強い上級者向けの道具まで揃っています。

 グラスは趣味で武具を作るのですが、かなり優秀で一級品を安定して作り出してくれます。

「相変わらず渋い趣味ですねグラス。して、目的はなんですか」

 問いかけると、一本の刀を差し出されました。

「自信作だ。俺の代わりに戦場で暴れさせてくれ。質は保証する」

 両手で受け取り、鞘から少し出して刀身を確かめます。鋭く反射する光。美しい細さの先に、力強い重みを感じる。

「振ってみても構いませんか?」

「存分に振るってくれ」

 左手で鞘を持ち、右手で柄を握る。やってみたかったんですよね、抜刀術。

 鞘の中で刀身を走らせ、速度を乗せたまま正面を振り抜く。

 空気さえも斬れた感覚。思わず笑みがこぼれてしまいます。

「気に入ったようだな」

 実に手に馴染みます。少し練習すれば実戦投入できますね。凄くいいです。

「そうですね。デッドの言葉を借りるのなら、かっこいいおもちゃじゃねぇか。でしょうか」

 刀に視線を落としながら言うと、デッドが面食らったような顔をしてしまいました。

「おいおい、その刀はなかなかのデキだと自負しているのだが」

「だからですよ。武器を振るってみて気づいたのです。武器を使うよりも、己の能力で戦った方が強いと。グラスもそうではありませんか?」

 勇者からは仮にも魔王と間違って呼ばれるほどの実力を自分たちは持っています。武器を持つと武器を振るう事に集中してしまいますが、自身の能力のみで戦うなら臨機応変した対応が可能でしょう。

 最初から武器を使って鍛錬したなら話は別でしょうが、付け焼き刃的に武器を取るとどうしても隙が出来ます。もっと言うなら、拘りに戦い方が捕らわれてしまうでしょう。

「そう言われると弱いな。俺も双剣を振り回す事にロマンを感じるが、実際には素手の方が強い」

「自分達は武器を持つ事で弱体化をしてしまうのです。例えどんなに武器が優秀であろうと。言い換えるなら、派手な手加減が可能になります」

 その上で気に入ったかっこいい武器を振るえるとなれば、言う事ありませんね。

 デッドはアイポから最上の手加減ができるプレゼントを貰ったのでしょう。一番望んだ物を一番大切な者からプレゼントされたとなれば、テンションがだだ上がりになるのも理解できます。

「そいつはいい事を知った。俺が戦うときも参考にさせてもらう」

 グラスは頭を掻きながら言うと、拳を突き出してきた。自分も拳を伸ばしてゴツンと合わせる。

「楽しんでこい、シェイ」

「グラスに言われるまでもありません」

 互いに笑い合ってから、刀を帯の隙間に差し込みました。

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