384 シェイ・タカハシ
もしもこの世界の主人公が勇者だというのなら、自分は脇役で一向に構いません。自ら光を放てるタイプではないので。
アクアのように明るく優しい光は放てません。デッドのようにギラギラと鋭い輝きも放てません。グラスのように愚直に己を磨き上げる事も出来ません。
ましてやシャインみたいにムダに眩しくて目に悪い存在になんかなりたくありません。
人影に覆われていた方が居心地がよいのです。
なので自分で選んだ光の影になる。自分の選んだ光が少しでも楽しそうにしてくれるのならそれだけで充分です。
影とは、光の強さに比例して強くなる物なので。
生まれた時から浴びていた、父上という淡く柔らかな光。傍にいるだけで心地よくて、この居場所だけは守り切りたいと強く願いました。
淡く柔らかな光に比例するなら自分は、薄く朧気な影となるでしょう。
そこまで影が薄いつもりもありませんけどね。
もしも父上の安全が確保されるのなら、自分は弱いままでも全く構わなかったです。
しかし父上は危険を冒してでも、魔王の座に奪う事を望みました。
眩しいほどの強い望み。でしたら望みの分だけ自分が刃と化しましょう。
尽くして褒められる事が、自分はなによりも好きなようですので。
漫然と強くなる事は好きなのですが、目的がなかったのも確かなのです。
鍛え上げた力を発揮する場所を父上が調えてくれました。自分の力を全力でぶつけるべく強敵もいます。
この朧気な影には盛大すぎる大舞台。ですが降りるつもりはありません。
せいぜいこんな影がいたんだと、記憶に刻み込んでやります。忘れ去られてしまわぬように。




