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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第5章 毒牙のデッド
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380 理想の順番

 バチンっ!

 二階建て一軒家、タカハシ家の実家。帰ってきて早々に自分は、ヴァリーに思いっきり頬を(はた)かれました。オレンジの瞳に涙を溜めながら、キッと睨み付けています。

「傍にいたならどうしてデッドを助けなかったのよー! この薄情者ー! シェイが死んじゃえばよかったんだー!」

 ヴァリーは言うだけ言って、隣の部屋へ走り去って行きました。

 頬というか、首が痛いですね。意外に強く、捻じ切れてしまうかと思いましたよ。

「薄情者ですか。案外間違っていないのかもしれませんね」

 頬を手で擦りながら、思います。確かに、助ける気は全くなかったなと。

「気に病むことはないさシェイ。ミーを差し置いて少女とイチャイチャするデッドが見果てたヤローなのさ。見捨てるのも当然さ」

 背中から不快な手が自分の肩を触りました。すかさずボディに肘打ち(ざんえ○けん)を放って撃沈させます。

 見境ない種馬に、デッドの純愛が汚されるのはとてもとても(しゃく)です。自分だってちゃんとした恋愛は好きなのですから。

「その話は別にして、直接宣戦布告したんだって? それはウチ、ズルいと思うんだ」

「エアの言うとおりだシェイ。俺も早く力を試したい。そんな手を使われては敵わん。そもそもシェイはトリを飾る実力だろうが」

 エアが文句を言うと、グラスが追い打ちをかけてきました。

「自分にトリは務まりませんよ。それこそグラスの役目だと思っていますよ」

 グラスほど地力を持っているのは他にいないでしょう。

「ちょっと意外だね。シェイもグラスも、最期の砦になりたいと思ってたんだけど」

「自分は早めを望んでいました。願わくば一番手を」

「俺もシェイと同じだ」

 エアの問いに自分とグラスが答えました。同じ考えでしたか。

「そういうエアはどうなのですか」

「ウチは中盤あたりかな。最初も最後も荷が重いからね」

 荷が重いなんてエアらしくない言いよう……いや、身軽に戦いたいと考えればある意味らしいですね。

「ミーが早々と(はかな)くなってしまってはイッコク中に女性が悲しんでしまうだろう。だからミーには最後が相応しいと思うのだよ」

 聞いてもいないのにバカがバカな回答を出しました。コイツだけは早めに滅した方がいいでしょう。順番を譲る気はありませんが。

「最後を飾るのはヴァリーちゃんだよー。一番長くパパと暮らすんだからー」

 ヴァリーが姿を見せずに隣の部屋からドア越しに叫びました。ヴァリーが最後も想像出来ませんね。実力を考えると、どうしても劣っているように思えますし。

「なんだかおもしろい話をしてるねぇ」

 フォーレが微笑みながら二階から下りてきます。

「折角ですので聞きしますが、フォーレは何番手をお望みで?」

 残っているメンバーで聞いていないのはフォーレだけですからね。ある意味一番予想がし辛いですし。

「アタイはできるだけ早い方がよかったなぁ。力量だけでみたら一番弱いからねぇ」

 抜けた表情をしながら、とんでもないことを()かしてくれます。

 自分たちの最後の模擬戦。本気で戦って全勝を掠め取ったのはどこのどいつでしたか。

「みんなそんなに見つめないでぇ。ホントの事を言っただけだよぉ。ただちょっと事情が変わったからぁ、最後の方がいいなぁ。具体的には七番手ぇ」

 らしいような、そうでもないような。判断に困る順番ですね。

「して、その事情とはなんでしょうか」

「デッドが死んだでしょぉ。そのショックでおとーのメンタルが想像以上にボロボロになっちゃったんだよねぇ」

 なっ!

 にへらと力なく微笑みながら告げられた内容に、自分を含む全員に衝撃が走りました。

「今ねぇ、落ち着く薬を飲んでもらってぇ、部屋を心地よい香りで満たしてから休んでもらってるのぉ。最近うなされてて眠れてねかったからねぇ。ようやく寝付いてくれたぁ。おとーの介護ぉ……介助も大変だよぉ」

 さらっと介護と言いましたね。それほど父上は厄介な状態と言う事ですか。

「だからギリギリまでおとーのお世話をしたいのぉ。でも最後は荷が重いからぁ、七番手ぇ」

 薬学的な意味で父上を支えられるのはフォーレしかいません。フォーレの順番だけは調整した方がよいでしょう。

「フォーレ、父上をお願いします」

「言われるまでもないよぉ」

 フォーレの微笑みはどこか、疲れたように見えました。

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