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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第5章 毒牙のデッド
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369 逆転の一手を

 油断からアクアをデッドの毒牙に晒してしまった。一人奮闘するエリスに追いつくことができなかった挙げ句にクモの巣に絡め取らせてしまった。

 ボクたちは、なんって不甲斐ないんだ。

「うおぉぉぉぉお!」

 遠くで冷たく目を光らせるデッドを睨み、全身全霊の力を溜める。

「おいおいジャス。まさかこの状況で撃つ気かよ。くそっ、クミンっ!」

「ったく、ワシ自身の防戦で手一杯だってのにジャスの尻拭いまでしなきゃなんないのかい。いざって時の人使いが荒い勇者だよホント」

 長い付き合いだけ合って、ボクの意図を汲み取ってくれた。

 毒グモがひしめき、クモの巣に移動を苛まれ、投げ落とされる岩塊に意識を削がれつつも、勇者の力を溜めなければならない。

「はっ、頼みの(つな)のブレイブ・ブレイドってか。そう易々と撃たせねぇぜ」

 妨害に入ったデッドは、ボクを狙ってクモの巣を発射する。

 やはりアクアとの戦いの時とは訳が違う。アクアに対してブレイブ・ブレイドを放てたのは、アクアが撃つまで待ってくれたからに過ぎない。

 だから溜める隙をむりやり作りだすか、或いは仲間に作ってもらうかしなければならない。

 押し寄せるクモの巣が、ワイズの凍結魔法で氷る。

 自らも毒グモの対処で手一杯だという中で、ボクに援護射撃を送ってくれた。

 ボクに這い寄る毒グモも、クミンが処理して回ってくれる。自身が受け持つ毒グモの数を倍に増やしながら。

 頼みの綱? 文字通り綱渡りのチームワークで、ブレイブ・ブレイドまで紡いでやる。

 この一撃でデッド、お前を倒すっ!

「なんで眼差しに希望を宿してんだ。実現しない一撃を信じてよぉ」

 デッドはあろう事か、地上に生えた岩を持ち上げ、強引に投げ飛ばしてきた。

「なっ!」

 ワイズでもクミンでも防ぎきれない物理の圧力。溜めを霧散させながらの回避行動を取らされる。

「このフィールド、僕の武器は無限にあんだ。悠長に力を試させる時間なんて与えねぇ」

 デッドが天井に張り付き岩を殴り壊しては、落石を作り出す。降り注ぐ岩を防ぐ術はなく、回避に専念させられる。

 一手。デッド自身を封じるもう一手が足りない。

 ワイズもクミンもギリギリで、デッドの妨害にまで手を伸ばせない。綱渡り状態故、長期になるほどボクらの危機が増す。

 奥歯を噛み締めてデッドを見上げる。油断のない冷たい表情がボクらを見下している。

「手詰まりみてぇだな。最後は三人仲良くくたばっちまえ」

 クモ糸で岩塊を絡めたデッドは、逆さまなまま標的を見定めてブンブンと振り回す。

 遠心力をつけられた一撃は、今までのどの攻撃より速いだろう。

 後ほんの少し、ほんの少しの隙さえあれば、充分なブレイブ・ブレイドが完成するのに。

 状況の不利を憎みたらした弱者の願い。起こらないはずの奇跡は、矢となり具現化したのだった。

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