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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第5章 毒牙のデッド
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367 毒牙最初の犠牲者

 デッドってば本気でキレちゃってるな。

 私は戦闘開始からずっと、同じ岩に座り込んで観戦を続けていた。

 攫った女性を手にかけることで勇者を煽った挙げ句に、毒グモを召喚する事で一気にジャスたちを追い詰めてる。

「キリがねぇ。フレイムショットっ!」

 ワイズが迫り来る毒グモを蹴散らしながら、コロニーと化したクモの巣の塊を焼き尽くす。

「ワイズ。あそこには女性の死体が」

「道理に反しようが、毒グモ製造元を絶たねぇとどうしよもねぇだろぉが」

「ぐっ……」

 ワイズの正論に言葉を出せないジャス。きっとせめて死体ぐらいは少しでも綺麗な状態で回収しようって思ってたんだろうね。

 けど大元焼き尽くさないときっと、無限に毒グモ出てきちゃうからワイズが正解かな。もう充分な数出ちゃってるのが難点だけれども。

 ジャスもワイズもクミンもエリスも、みんな四方八方からくる毒グモの対処で防戦一方。更にデッド本体からの攻撃も飛んでくるもんだから堪ったもんじゃないね。

 その内誰かが毒グモに噛まれそうかも。さすがに全員噛まれることはないと思うけど、一人ぐらいは餌食になっちゃうかな。

 ジャスはおそらく大丈夫。一番危険なのはやっぱり戦闘経験が少ないエリスかな。けど大剣で振りの遅いクミンだって危険だし、魔法使いのワイズだって機敏な動きは出来ないよね。うーん、誰が最初か予想着かないや。

 デッドってば容赦なさ過ぎる気がする。ちゃんと逆転の糸口を残してるのか心配だよ。それにしても。

 最後の一人になったドワーフの少女を眺めながら思う。

 あの色鮮やかなピンク色の娘、どこかで見たことあるような気がするんだよね。

 怯えた様子がないどころか、ピンクの瞳を輝かせながら食い入るように観戦してる気がするし……

 カプッ。

「……え?」

 不意に感じた小さな痛み。岩につけていた右手を見下ろす。紫色の毒グモが、私の腕に噛みついている。

「……デッド?」

 どうして?

 接近戦を仕掛けてから距離を取ったデッドが、私の呟きを拾って赤い視線を向ける。

「なに驚いてんだ。テメェも敵だぜ、アクア」

 心臓が跳ねる。座っていられなくって地面へ倒れ込む。痛みが全身を駆け巡って痙攣を引き起こす。息をするだけで痛い。息そのものが難しい。

「負けて生きてるだけならともかく、勇者について戦場まで来てんだ。味方じゃなきゃ敵に決まってんだろ」

「なっ、アクアはデッドの家族じゃないのか」

「テメェらだってアクアの強さ知ってんだろ。敵に回る前に処理しなくてどうするよ。元々勇者(テメェ)らと戦って死ぬつもりだったんだ。僕が殺したって問題ねぇ」

「問題大ありに決まってんでしょ!」

 言葉だけが飛び交っていく。戦況を見る余裕もない。

 私、戦うつもりなかったんだけどな。私を敵と見てるのってデッドだけなのかな。もしかして、他のみんなも?

 だめだ、考えがまとまらないや……

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